昨年1年間に全国の警察が大麻絡みで摘発した容疑者は2778人で、前年を507人(22・3%)上回って過去最悪を記録したことが、警察庁のまとめでわかった。
有名大学の学生や大相撲力士、スポーツ選手の摘発が相次ぐなど20歳代以下が全体の62・5%で、覚せい剤絡みの摘発者が1万1041人と前年より968人(8・1%)減少する中、若者の大麻汚染の深刻化が浮き彫りになった。
容疑別で増加が目立つのは、大麻を種子から育てる「違法栽培」で、前年より83人(65・4%)多い過去最多の210人が摘発された。大麻取締法は種子の売買を禁じていないため、インターネット上で種子が公然と販売されており、約8割が自宅の室内や押し入れで栽培していた。
年齢別では20歳代が1516人(54・6%)、30歳代が682人(24・6%)、20歳未満が220人(7・9%)。大学生は前年比3人減の89人で、高校生は同21人増の49人。中学生も2人が摘発された。初犯者が全体の85・5%にあたる2374人に上っており、使用の動機を「かっこよかった」と供述する初犯者も少なくなかったという。
◆即効薬なく苦慮する大学やスポーツ界◆
歯止めがかからない大麻汚染に、逮捕者を出した大学やスポーツ団体などは自主調査に乗り出しているが、実態把握には膨大な手間と時間が必要で、汚染を食い止める“即効薬”は見つかっていない。
昨年6〜9月、キャンパス内で大麻を吸引していた男子学生5人が逮捕された法政大学では、事件が同10月に報道された後も、だれが逮捕されたのか、すぐには把握できなかった。このため教職員ら7人でつくる調査委員会は、逮捕者が「大学の図書館の読書室や学生会館の会議室で吸った」と供述しているとの報道を手がかりに、図書館や会議室の利用者名簿の人物をしらみつぶしにあたり、利用者の一人が逮捕された学生だと割り出した。
この学生の友人から聞き取り調査をした結果、5人の逮捕者のほかに8人の学生が吸引の場にいたことが判明。8人のうち一部は大麻使用を認めなかったため、周囲の証言などを改めて確認。「8人は大麻を吸引していた可能性が高い」と判断し、全員を今月13日に無期停学処分にするまで、4か月以上を費やしている。
一方、昨年11月、プロテニスプレーヤーの宮尾祥慈選手が逮捕された日本テニス協会では、宮尾選手が裁判で「2004年の海外遠征で先輩に勧められた」と証言したことを受け、宮尾選手と同じ大会に出場した日本人選手をリストアップし、独自調査が可能か検討した。しかし、プロ選手との間に雇用関係はないため、「人権侵害になる恐れがある」として調査は断念せざるを得なかった。同協会の鈴木宏事務局長は「テニスの場合は大相撲と異なり、協会はプロ登録をする事務方に過ぎない。契約で縛ることはできず、選手を信じるしか方法がない」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090220-OYT1T00038.htm