電機大手の東芝は、3000億円を超える規模の資本増強に踏み切る方針を固めた。
昨秋以降の世界的な景気悪化を受け、2009年3月期決算で大幅な赤字に陥る見通しとなり、弱まった財務基盤を立て直す必要性が高まったためだ。今後は国内の主要メーカーでも景気後退の影響で業績が急激に悪化し、巨額の資本増強を迫られるケースが相次ぐ可能性がある。
東芝は資本増強を09年度前半までに行うと想定している。新株発行などの場合は1株当たりの価値が薄まって株価が下がる恐れもあるため、資本増強の方法は株式相場の動きを見極めながら慎重に判断する。資本増強の額は3月期末の業績を踏まえ5000億円規模に膨らむ可能性もある。
東芝は08年4〜12月期連結決算で税引き後利益が1595億円の赤字に転落。財務の健全性を示す自己資本比率は12月末時点に11・9%(資本合計額6698億円)と、08年3月期の17・2%(同1兆222億円)から大きく目減りした。09年3月期には赤字幅が2800億円に拡大する見通しだ。
電機業界では、日立製作所の自己資本比率が12月末時点で17・4%、NECが24・0%で東芝より高い。自己資本比率が同業他社より大幅に低いと、資金調達する際に金融機関などから高い金利を求められるなど不利になるため、東芝は巨額の資本増強で自己資本比率の10%割れを避ける狙いがあると見られる。
米国発の金融危機と景気悪化の深刻化で保有株の株価が下落し、多くの企業が大幅な損失を計上している。昨秋以降、三菱UFJフィナンシャル・グループが8000億円弱の資本増強を実施、野村ホールディングスが最大3000億円の増資を計画するなど金融大手も資本増強を急いでおり、その波が産業界に及んだ格好だ。
ただ、国内企業の業績悪化は顕著で資金の出し手も限られる。政府は、日本政策投資銀行などが企業に出資し、その一部に政府保証を付ける新制度を導入する方針だ。出資で損失が出た場合の補償枠として1・5兆円を準備しているが、民間企業に資本増強の動きが相次げば、補償枠の拡大や別の安全網構築の必要性も高まりそうだ。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090220-OYT1T00607.htm