強引な市政運営の一方、支援者から頼まれれば断れない優柔不断な性格−。受託収賄容疑で名古屋地検特捜部に逮捕された愛知県西尾市長の中村晃毅容疑者(71)。知人や元部下らの証言から、そんな人物像が浮き上がる。当落を繰り返した選挙で貯金を使い果たしたうえ、きっぱりと断り切れない性格が業者との癒着や汚職を招いたとの指摘が出ている。
「設計を変えたい」。2005年9月、元市幹部は、市長に就任したばかりの中村容疑者の言葉に耳を疑った。前市長の手で8割以上固まっていた新庁舎設計案に、新市長が突然、変更を指示した。翌年1月には設計事務所を選定し直し、設計費としては1億5千万円の税金が無駄になった。
「どうしてですか」と迫る元幹部に中村容疑者は「(前の)設計事務所が気に入らない」の一言。「あそこまで変更にこだわった理由が今もわからない」と元幹部は振り返る。
「強引」「独断的」−。中村容疑者の仕事ぶりをこう表現する元職員は多い。「人の話を聞いていたら、何もできない。自分が決め、進むだけだ」。苦言を呈する職員にはこう言い放ち、気に入らなければ外郭団体へ出向させたケースも。元幹部は「そうやって、周りにイエスマンしかいなくなったのだろう」と話す。
一方、支援者らに対しては「はっきり物が言えない性格」との指摘も。「決断力」を政治信条の一つに挙げていたが、旧友の岡田隆司市議会議長は「支援者から無理なお願いをされると、あいまいな返事をするだけ。ニコニコしてごまかしてばかりだった」と振り返る。
地元の高校を卒業後、父親から農業と瓦製造を引き継ぎ、37歳で市議会議員に初当選。県議選、市議選、市長選で当落を繰り返してきた。関係者によると、選挙資金で貯金が底をつき、父から譲り受けた農地を売るなどして、食いつないできたという。
30年以上の支援者という60代の男性は「ある意味、人が良いのが弱点。今回の事件は村田容疑者にはめられたのでは」と話す。
(中日新聞)