不況下でも乗客数を減らすまいと、東海地方の小規模な鉄道会社が「あの手この手」の集客作戦を展開している。車窓からの風景を存分に楽しめる貸し切り電車や、車内で地元の名物料理を提供する「イベント列車」の運行だ。各社とも「路線の知名度アップにつなげたい」と意欲をみせている。
◆貸し切りリニモで「浮く」体験
2005年の愛・地球博の閉幕後、経営不振に苦しむ「東部丘陵線」(愛称リニモ)。運営する愛知高速交通(愛知県長久手町)が導入し、人気を集めているのは貸し切り電車の「わくわく貸し切りリニモ」だ。
リニモは日本で唯一の磁気浮上式リニアモーターカー。「日本で唯一」「浮く電車」の響きが、関西地方などからの観光客に真新しさを持って受け入れられているという。07年秋からの累計運行本数は3月に100便を超える見込みだ。
貸し切り運行では、通常は体験できない時速100キロへの急加速や、着地と浮上を繰り返すデモンストレーションが味わえる。
藤が丘−八草間の約9キロを、営業運転の2倍の約30分かけて運行。料金は最長区間運賃360円に、座席定員の104を掛けた3万7440円だ。
「ダイヤの空き時間を有効活用し、少しでも収入を得られれば」と、同社企画営業担当の江尻和聡さん(38)は力を込める。
◆薬膳、おでん、しし鍋…“名物”列車も
養老鉄道(岐阜県大垣市)は3月12日から大垣−桑名間で、ニンニクやモロヘイヤなどを使った薬膳(やくぜん)料理を車内で提供する「薬膳列車」を走らせる。料金は1日乗り放題乗車券が付いて大人5千円。
目標は月300人の利用で、営業担当者は「昨秋以降、通勤定期の販売枚数が減った。少しでも状況を変えたい」と話す。
1月末まで缶ビールやおでんなどを車内で出す「おでんしゃ」を走らせた豊橋鉄道(愛知県豊橋市)は、今年夏も生ビール飲み放題の「納涼ビール電車」を17年連続で運行する計画。
ぼたん鍋などを出す樽見鉄道(岐阜県本巣市)の「しし鍋列車」は、この冬は2月末までの運行だが、「すでに予約で満杯」(営業担当)の人気ぶり。
各社とも「別のイベント列車が設定できないかどうかを検討中」(養老鉄道)と、知恵を絞っている。
(中日新聞)