【ジャカルタ=林英彰】アジア歴訪中のクリントン米国務長官は18日午後、2番目の訪問国インドネシアのジャカルタに到着し、同国のハッサン外相と会談した。
会談後の共同記者会見で、長官は「(両国は)環境保護や気候変動、民主化拡大、テロ対策など共通の利益について話し合う『包括的パートナーシップ』の構築を目指すことで合意した」と明らかにした。
長官は会見で、インドネシアが世界最多のイスラム人口を抱え、人口規模で3番目に大きい民主国家であると強調、同国が今後、「(平和と繁栄を)促進する役割を担うだろう」と述べ、イスラム国家の民主化でも主要な役割を果たすとの期待感を示した。ハッサン外相は「インドネシアでは民主主義とイスラムと現代性が共存している」と述べ、米国の「有能なパートナー」であることを強調した。
クリントン長官はまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)の基本条約である東南アジア友好協力条約(TAC)について、「(米国の)加盟に向け、政府機関内の調整を始める」と述べ、ブッシュ政権下では関心が薄いとされた東南アジア重視の姿勢も示した。
米国務長官が初外遊でインドネシアを訪問するのは異例で、イスラム世界との対話を世界的規模で進め、関係改善を促進させたいオバマ政権の狙いが表れた形だ。長官は、ミャンマーの民主化問題にも言及、米インドネシア両国が協議を深めながら、対応する必要性を強調した。長官は、19日にユドヨノ大統領と会談する。
長官は18日、米国務長官として初めて、ジャカルタのASEAN事務局も訪問。スリン事務局長と協議し、タイで今年半ばにも開かれる予定のASEAN地域フォーラム(ARF)に出席することを明らかにした。ASEAN内でも、経済・政治両面で影響力を強める中国をけん制したい立場から、米国が「(中国との)カウンターバランスの役割を果たす」(国立インドネシア大学のウィラワン教授)ことへの期待がある。
一方、ジャカルタの大統領宮殿前では18日、長官の訪問に反対するイスラム学生団体メンバー約100人が、長官の写真に靴を投げつけるなど抗議活動を行った。各地でも抗議デモが行われたが、いずれも小規模で大きな混乱はなかった。