記事登録
2009年02月19日(木) 22時30分

不妊治療で受精卵取り違え 香川、妊娠9週目に人工中絶中国新聞

 香川県は十九日、県立中央病院(高松市)で昨年九月中旬に不妊治療を受けた同市の二十代女性に、誤って別の患者の受精卵を移植した疑いがあることが分かり、妊娠九週目に人工中絶をしたと発表した。

 産婦人科の男性医師(61)が、受精卵を培養するための容器を取り違えたのが原因とみられる。受精卵の取り違えは二〇〇〇年に石川県内の医院で発覚したが、妊娠まで明らかになったのは初めて。ミスの再発防止策が求められそうだ。

 病院は女性に謝罪し、健康上の問題はなく、再び妊娠も可能と説明している。一方、夫婦は精神的苦痛を受けたとして十日、県に二千万円の損害賠償を求め高松地裁に提訴。代理人弁護士は「女性は病院側の説明に納得していない」と話した。

 記者会見した松本祐蔵まつもと・ゆうぞう院長は「妊娠したという絶頂の喜びのなか、中絶をしなければならない精神的負担は想像を絶する。病院として大変申し訳なく思う」と謝罪した。

 病院によると、女性は昨年四月に産婦人科を受診。医師は九月、作業台の上に別の患者の受精卵が入った容器(シャーレ)を置いたのを忘れ、女性の名前が書かれたふたをかぶせたという。

 医師はミスに気付かないまま女性に受精卵を移植。十月七日、超音波検査で妊娠が分かり、女性に伝えた。その後、受精卵の発育状況などから別人の可能性があることに思い当たり、作業手順を検証して取り違えに気付いた。医師は同三十一日、院長に報告した。

 医師や松本院長らは十一月上旬、二度にわたり女性と夫に謝罪。夫は医師らに「自分たちの受精卵の可能性はないか」と問い詰めた。病院側は、妊娠十五週まで待てば判別できるが、中絶時の身体的負担が大きくなると説明。夫婦は同十一日、中絶を選んだ。

 医師は約二十年前、同病院に赴任し、約千例の体外受精の経験があるベテラン。医師一人で作業し、第三者によるチェック態勢は取られていなかった。病院はマニュアルなど安全対策を徹底するとしている。

 女性側から病院に訴状が届いたのは二月十八日。公表が遅れた点について「いずれ公表するつもりだった」と釈明した。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200902190239.html