広島県安芸太田町内の無人野菜売り場で商品を盗まれる被害が相次いでいる。山県署は捜査の結果、昨年は5人を窃盗容疑で書類送検したが、被害金額が小さく泣き寝入りの農家も多い。新鮮な特産品を取り扱い、都市部と中山間地域を結ぶ役割を果たすだけに、関係者は心を痛めている。
同町戸河内地区。1畳余りの無人の売り場にイチゴが並ぶ。農家の男性(48)は6年前から栽培を始めた。冬場の貴重な収入源で、早朝、約6アールのビニールハウスで一粒一粒丁寧に摘み取る。「信用の上に成り立つささやかな交流の場」と話す。
しかし無人を逆手に、金額を投入せず持ち帰る人は少なくない。「リスクは承知の上なんですが…」とこの男性は漏らす。人を置くのは難しく、やむなく昨年、防犯カメラを設置した。
山県署は昨年、農家の相談を受け、張り込みやや目撃情報などから車両を特定。戸河内、加計地区で白菜やイチゴなど1500—200円相当を盗んだとして広島市に住む43—67歳の計5人を書類送検した。「軽い気持ちだった」などと反省しているという。
【写真説明】広島県安芸太田町内の野菜直配所を巡回し、農家に声をかける山県署員