【ニューヨーク18日共同=小林義久】一九九〇年代に日本などへの覚せい剤密輸が発覚した北朝鮮が二〇〇二年から国家ぐるみの麻薬取引を事実上、中止し、外貨獲得源を偽札製造や偽たばこの密輸などの違法活動に方向転換させたとみられることが国連薬物犯罪事務所(UNODC)の調べで十八日、分かった。同事務所のコスタ事務局長が共同通信とのインタビューで明らかにした。
米国務省の〇八年二月の報告書は北朝鮮が麻薬取引を縮小させた可能性があるとしていたが、麻薬や犯罪、国際テロを調査・分析している国連機関のトップが認めたのは初めて。
事務局長は北朝鮮が偽札製造や偽たばこの密輸を手掛けていることについて「多くの証拠がある」と強調した。米政府は偽造百ドル札「スーパーノート」をめぐり北朝鮮製の疑いが強いとしている。
北朝鮮の麻薬取引について事務局長は「非常に注意深く調査を続けてきた」と強調。一九八〇、九〇年代に北朝鮮は大規模な取引を行い、外交官の関与などから「国家ぐるみだった可能性が高い」とした。
しかし、二〇〇一年九月の米中枢同時テロ後、国際的に麻薬の取り締まりが厳しくなったことなどから、〇二年には国家ぐるみの麻薬取引を中止したとみられる。その後は例外的な小規模取引はあるものの、国家の関与については「証拠はない」という。
北朝鮮は〇七年三月、麻薬に関する国際三条約を批准。北朝鮮政府は同事務局長に対し、今年末までに平壌を訪問して麻薬犯罪対策で協力するよう求めているという。