ロシアとの経済協力の進展を、懸案の北方領土問題の打開にどうつなげるのか。政府は、ロシアと粘り強く交渉を重ね、北方4島の帰属問題を解決していかねばならない。
麻生首相が、日本の首相として戦後初めてサハリン(樺太)を訪れ、メドベージェフ露大統領と会談した。
大統領は領土問題に関し、「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」の下で作業を加速すると表明した。4島の帰属や返還を巡り、新たな打開案を探る意向を示したと受け止められている。
首相は会談後、「向こうは2島(返還)、こっちが4島では進展しない。これまでの宣言や条約などを踏まえ、政治家が決断する以外、方法はない」と語った。
領土問題に意欲的に取り組む姿勢を示したのだろう。ただ、政治的な成果を急ぐ余り、日本が長年守ってきた立場を損ねることがあってはなるまい。
ロシアは、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言に基づく解決を主張してきた。
しかし、国後、択捉両島を含めた4島は、日本固有の領土だ。
首相は外相当時の06年、国後、歯舞、色丹の3島返還論などに言及したことがある。ロシアの専門家には「2島返還プラス国後、択捉の共同開発」による解決を探る動きもあるという。
5月のプーチン首相の来日が次の節目となる。領土交渉は国益に直結する。ロシアの狙いを見極め、慎重に進めることが肝要だ。
会談では、ロシアが北方4島に入域する日本人に「出入国カード」提出を求めている問題の打開を急ぐことも確認した。ロシアは領土問題に本気で取り組むつもりなら、解決策を講じるべきだ。
首相は今回、大統領の招きに応じ、日本企業も出資する原油・天然ガス資源開発事業「サハリン2」の稼働式典に出席した。
サハリン2はロシア初の液化天然ガス(LNG)輸出事業だ。経済危機にあるロシアは、天然ガスの販路を欧州からアジア・太平洋にも広げ、日本から技術や投資を呼び込みたいのだろう。
日本にとっても、ロシアからのLNGの輸入は、エネルギー供給源の多様化につながる。
ただ、サハリン2は、事業の最終段階でロシア政府が強引に経営権を奪取した。日本政府は、経済協力を進めるにあたっては、ロシアに投資環境の透明化を求めていかねばならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090219-OYT1T00052.htm