経営危機に陥った米自動車大手の再建の道筋はいまだに霧の中だ。追加支援するかどうか、オバマ大統領は、難しい決断を迫られよう。
大手3社(ビッグスリー)のうち、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが、経営再建計画を政府に提出した。
昨年末、政府が両社に緊急のつなぎ融資を決め、破綻(はたん)を一時的に回避した際に義務付けていた。
その再建計画の柱は、資金繰りに苦しむGMが、最大166億ドル(約1兆5000億円)の追加支援を要請したことだ。クライスラーも、50億ドル(約4500億円)を新たに求めた。
国がすでに投入した分を含めると、GMへの支援額は合計で300億ドル、クライスラーは90億ドルに達する計算だ。
支援額が際限なく拡大しかねない事態に対し、議会や国民の間から、厳しい批判が高まることも予想されよう。
両社は一応、リストラ策も打ち出した。GMは、世界全体で4万7000人の従業員を削減し、2012年までに米国で計14工場を閉鎖する。クライスラーも従業員3000人を削減する。
巨額支援を再び仰ぐ以上、当然の対応だ。しかし、最も肝心な点が盛り込まれなかった。それは、GMで言えば、約600億ドルに上る巨額債務と、割高な労働コストの削減策である。
再建計画の提出期限までに、これに抵抗する債権者や、全米自動車労組(UAW)との交渉がまとまらなかった。
今後の焦点は、両社が、債務削減と労働コストの削減の具体策を早期に決定できるかどうかだ。UAWも、このままでは業績不振に拍車がかかるという厳しい現実を見つめ直すべきでないか。
米国新車市場は急速に冷え込み、米自動車各社の販売不振は深刻だ。こうした逆風のもと、売れる車をどう作っていくかという、具体的な戦略も欠かせない。
オバマ政権は、3月末までに再建計画の実現性を精査し、追加支援の是非を判断するという。
納得できるような追加策を盛り込まないと、政府は計画を承認できまい。
そうなれば、日本の民事再生法にあたる連邦破産法11章の適用が現実味を帯びる。GMなどを顧客とする日本の部品業界や、米国内で部品調達する日本車メーカーへの影響も懸念される。
経営再建か、破綻か。ビッグスリーの苦闘はまだ続く。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090219-OYT1T00047.htm