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2009年02月19日(木) 00時00分

鍋島小紋あでやかひな人形読売新聞

着物に鍋島小紋を施したひな人形を手にする福岡さん

 第9回佐賀城下ひなまつりが21日、佐賀市中心部で始まる。佐賀藩鍋島家の武士だけが裃(かみしも)などに施すことができた「鍋島小紋」という紋様をひな人形の衣装に復活させ、まつりの礎をつくった人形作家、福岡伊佐美さん(佐賀市東佐賀町)は「佐賀でしか見られない人形の素晴らしさを伝えたい」と、今年も自慢のひな人形を出品する。(本部洋介)

 福岡さんは大阪府出身。4歳の頃、転んで背骨を折り、外で遊べなくなった。「友達にしなさい」と母親から与えられた多くの人形を“話し相手”に幼少時代を過ごしたことが、将来の道を決めた。10歳の頃、佐賀県に引っ越し、高校卒業後に人形作家として独立、主に木目込み人形を手がけてきた。

 鍋島小紋は1981年頃、本で知った。一つの点から短い8本の直線が放射状に延びた直径数センチの単純な紋様は、ゴマの殻の断面をモチーフにしたという。当時、一般的な紋様が施された市販の絹を使っての人形作りに限界を感じており、県立博物館で鍋島家の衣装を見せてもらって研究。伝統的な紋様が忘れられている現状への危機感もあり、人形作りに取り入れた。

 市販の絹に型を押し、濃い赤や薄い青などの鍋島小紋を施す。その生地を衣装に仕立て、めびなに2〜4種類、おびなに2種類ほど使う。美しい配色が特徴で、風化しつつあった鍋島小紋に新しい魅力を吹き込んだ。

 87〜00年に自宅などでひな人形展を開催。1か月弱の期間中に最大2000人を集め、01年、現在の佐賀城下ひなまつりに発展した。06年には県内を訪問された皇后さまが、福岡さんのひな人形を見て「すてきですね」と感動されたという。

 今回は、旧古賀家の広い畳の間に若草色の布を敷き詰め、数十個の膳(ぜん)を置いて、主宰する人形教室の生徒たちと作ったひな人形約150体を展示する。「佐賀にはどこにも負けない人形があることを知ってほしい」と話している。

 佐賀城下ひなまつりは3月31日まで。旧古賀家や徴古館など半径約1キロの区域内の8会場に、多種多様なひな人形などが展示される。昨年は期間中、9万人近くが訪れた。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saga/news/20090218-OYT8T01008.htm