麻生太郎首相(68)の首を取るのは、やはりこの人なのか—。自民党の小泉純一郎元首相(67)が18日、訪問先のモスクワで記者会見し、定額給付金関連法案を衆院で再議決する場合、本会議を欠席すると語った。中川昭一前財務相(55)の引責辞任から一夜明けての「造反」予告。この日発表の共同通信の世論調査では内閣支持率が13・4%まで下落し、党内からは公然と「麻生降ろし」の声が噴出している。首相は完全に退陣モードに追い込まれた。
訪問先のモスクワで記者会見した小泉氏は、麻生内閣の目玉の定額給付金を盛り込んだ08年度第2次補正予算関連法案で来週にも予想される衆院での再議決についてハッキリと異を唱えた。「与党が3分の2(以上の議席による再議決)を使うという本会議が開会される場合は、私は欠席します」。
4年前の郵政選挙。選挙前の郵政民営化法案の国会での採決で多数の造反者を出したが、今回は打って変わり、自らが造反、現政権に迫る姿勢を見せた。
寒い国でも元首相による「麻生切り」は容赦ない。「郵政民営化に賛成ではなかった」発言などの対応について「今の自民党の議席が、どういう過程で得られたのか理解していないのでは」と不快感をあらわ。「だから(自らが衆院通過時に)賛成したのと違ってもいい。政治家だ」とぶった切った。
12日の郵政民営化推進派の会合で「笑っちゃうくらいあきれる」と首相をこき下ろした時も、衆院再議決に関しては慎重姿勢に終始。14日からモスクワ訪問に出発したため続いていた“休戦”状態だが、この宣戦布告で完全に破られた。
先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)閉幕後のもうろう会見で中川前財務相が引責辞任し、麻生内閣を囲む環境がさらに悪化。そこに追い打ちをかけるように飛び出した小泉氏の「造反宣言」。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「まだ、麻生降ろしの布石にしか過ぎません。その証拠に小泉氏は『反対』ではなく『欠席』で“寸止め”にとどめている」と話す。
衆院再議決は、与党以外が全員反対すると仮定した場合、与党から16人が反対すれば再可決できないが、棄権や欠席だと47人が造反する必要がある。
現段階では再可決に支障はない見込みだが、伊藤氏は「2ケタ近い造反者が出れば、党内の麻生降ろしが本格化する。その可能性は五分五分」と指摘。「小泉氏は本当の勝負所を来年度予算成立後と見ているのでは」とした。中川秀直元幹事長など大物議員は「今後を見越して、今回は賛成に回るでしょう」と見ている。
小泉氏は20日に帰国。「政界復帰とか首相に意欲があるとか言う人がいるが、まったく考えていない」と改めて引退を強調した。
(2009年2月19日06時01分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090219-OHT1T00086.htm