五月に始まる裁判員制度に向け、最高検は十七日、分かりやすく、迅速で的確な立証をするための捜査や公判の在り方をまとめた「裁判員裁判における検察の基本方針」を公表した。
証拠を厳選し、自白調書があっても提出しない可能性にも言及。公判廷での立証活動を充実させ、書面中心になりがちだった従来の手法からの転換をあらためて示した。
基本方針ではまず、裁判員が審理の内容を十分理解し、適正な判断をできるような公判活動が検察に求められると指摘。
これまでのように証拠をできるだけ多く公判に提出していた立証手法については「いたずらに時間を要して裁判員が情報過多の状態になり、適切な判断が妨げられる恐れが大きい」と批判。
捜査段階で自白した被告が「不当な取り調べで誘導された」などと任意性を争う場合には、取り調べ状況を録画したDVDを利用すれば効果的だと提言。一方で、任意性や信用性が争われる自白調書をめぐっては、ほかの証拠での立証が可能なら「裁判員の負担軽減や立証コストの観点から、提出しないことも考えるべきだ」と明記した。
また、遺体写真の取り扱いについては「ほかに犯行の残虐性を立証できない場合、必要な範囲で証拠調べを求めるが、裁判員の心理的負担などにも十分配慮する必要がある」と説明。解剖写真もイラストで代用する方法を提案した。
難解な専門用語が多い精神鑑定書に対しては、用語解説集の準備など工夫が必要としている。
昨年十二月に始まった被害者参加制度を踏まえ「争点など具体的内容を誠実に説明し、捜査段階から立証の在り方への意見や希望を聞いておく必要がある」と、被害者や遺族への配慮を重視。
法廷で証人尋問に答えていた被害者を脅迫した被告を東京地検が今月、逮捕した事件のように、証人威迫や偽証の行為には厳正に対処する方針も示した。