BS朝日が中国と共同制作した「純名りさ 悠久の大河800キロの旅〜中国・桂林の絶景と大自然を守る人々〜」が28日午後7時から同局で放送される。中国政府から全面協力を受けた民放では数少ないドキュメンタリー番組で、中国屈指の景勝地・桂林の環境問題に迫る。リポートを担当した純名に聞いた。(辻本芳孝)
水墨画のような美しい風景に恵まれた桂林には、国内外から年間1000万人以上の観光客が訪れる。中国は初めてという純名は、桂林からチャーター船で漓(り)江を83キロ下るなどし、約800キロ下流の広東省珠海(じゅかい)までをリポートする。
漓江は、観光客によるゴミや生活排水などで水質汚染が進み、桂林市が改善に取り組んでいる。純名は、観光ガイドの傍ら河川のゴミ拾いをしている市民ボランティアから話を聞く。
また、爆弾をさく裂させたり、電気を流したりして魚を一網打尽にする密漁者を取り締まる水上警察のパトロール艇に同乗。摘発の現場に出くわし、「パトロール艇内は緊迫していたけど、密漁者たちは悪びれていなかった」と、密漁者に順法意識が欠如していることに驚いていた。
始皇帝が作った世界最古とされる運河を通ってビーフン発祥の地を訪れ、少数民族ヤオ族と交流するなどして珠海に到達。遠くに見えるマカオの華やかな夜景に内陸との格差を実感し、桂林の上流にある秦代からの街・興安(こうあん)を、「タイムスリップしたみたいだった。2000年前の建物の中で人間だけが生まれ変わって生活しているようで感動しました」と振り返った。
山間地では、仕切りがなく用を足す者同士が丸見えの“ニーハオトイレ”を、布で囲われながら初体験した。「生きるってことはそういうこと。強くなりました」と笑顔を見せた。
今回の番組は、中国国務院の対外広報部門「新聞弁公室五洲伝播中心」の全面協力を受け、BS朝日が、北京に子会社を置く番組制作会社「テレビクリエイションジャパン」(東京)と共に取り組んできたドキュメンタリーの第3弾となる。2006年に紫禁城(北京)、08年に世界遺産・麗江(雲南省)の樹齢3200年の茶樹をテーマに番組を制作してきた。
テレビクリエイション社の波多野修・制作部長によると、中国での撮影は、政府との関係の有無が大きく左右するという。「日本側だけで行うと撮影の許可が出にくいうえ、地方政府の協力を得られず情報収集すらままならない」と話す。
漓江では船のチャーターも通常許可が下りない。政府の口添えのおかげで、水上警察への同行も認められたといい、同社の張森(ちょうしん)プロデューサーは「中央政府の協力は大きい。ほかの日本のメディアでは撮れない作品を作っていきたい」と既に次作への意欲を見せた。