「戦後最大の経済危機」に立ち向かうべきこの時に、内閣の中枢にあった中川昭一財務・金融相が辞任した。異常な事態である。
麻生首相は、与謝野馨経済財政相に、財務・金融相を兼務させた。与謝野氏の政策的な力量を評価したものだろう。2009年度予算案などの早期成立に向け、態勢の立て直しが急務だ。
中川氏は、先にローマで開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の閉幕後、ろれつが回らない状態で記者会見した。国内外に批判と混乱を招いた以上、辞任はやむを得まい。
麻生内閣の閣僚辞任は、中山成彬・前国土交通相に続き、2人目だ。内閣支持率の低迷に苦しむ首相は、一段と厳しい政権運営を迫られる。
中川氏は17日昼に緊急記者会見し、いったんは、09年度予算案と関連法案の衆院通過を待って辞任する意向を表明した。
自らの職責を果たすことにこだわったのだろう。
しかし、民主、共産、社民、国民新など野党各党は、「辞意を表明した閣僚を相手に審議はできない」とし、野党多数の参院に中川氏の問責決議案を提出した。
問責決議には、法的な効力はない。だが、可決されれば、参院で審議中の08年度第2次補正予算の関連法案を含め、国会審議の混乱は避けられない。
加えて、自民、公明の与党内からも、中川氏の即時辞任を求める声が出た。
結局、中川氏は、この日、国会の混乱を避けるため、辞表を提出することになった。麻生政権の危機管理の甘さが露呈した形だ。
G7での記者会見は、各国の財政金融当局者が市場に明確なメッセージを発信する大切な場だ。今回は、経済危機への日本の対応が注目されていた。
中川氏のG7後の記者会見での酩酊(めいてい)したかのような表情や、ちぐはぐな受け答えぶりは、テレビやネットで繰り返し流された。
中川氏は、風邪薬や腰痛の薬を多めに飲んだのが原因と説明したが、自己管理に問題があったのではないか。
衆院では、09年度予算案の審議が大詰めを迎えている。所得税法改正案など予算関連法案の審議も始まっている。参院では、定額給付金などを盛り込んだ第2次補正予算の関連法案の採決も先送りされたままだ。
麻生政権は、これらの成立に全力を傾注しなくてはならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090217-OYT1T01062.htm