北朝鮮やアフガニスタン、世界経済、地球温暖化……。多様で困難な外交課題の克服に向けて、日米両政府は戦略対話を重ね、政策調整を深めるべきだ。
クリントン米国務長官は中曽根外相との会談で、日米同盟を強化する方針を確認し、在沖縄海兵隊のグアム移転協定に署名した。
長官が日本を初外遊先に選んだうえ、麻生首相とオバマ大統領の首脳会談の24日開催が早々に決まった。いずれもオバマ政権が日米関係を重視する表れとされる。
だが、それに満足するだけで良いはずがない。より大切なのは、日米対話の内容を充実させ、戦略的な外交を展開することだ。
当面の試金石は北朝鮮だ。
核の申告や無能力化は極力遅らせ、見返りの経済支援やテロ支援国指定解除はしっかり得ようとする。それが北朝鮮の行動パターンだ。日米両国は、中国や韓国とも足並みをそろえ、核計画の厳密な検証作業を迫る必要がある。
日本人拉致問題について、クリントン長官は「米国として優先すべき問題」と強調した。日米協力を、拉致被害者の再調査の実現など具体的な進展につなげたい。
北朝鮮は長距離弾道ミサイル発射の準備の動きを見せている。米朝協議を有利に運ぼうとする揺さぶりに動じてはなるまい。
ミサイル発射は2006年10月の核実験後の国連安全保障理事会決議に違反し、追加制裁を招くなど、北朝鮮の利益にはならない。日米両国が、そうした明確なメッセージを発することが大事だ。
「テロとの戦い」も戦略対話の重要なテーマである。
中曽根外相は閣僚級のパキスタン支援会議の日本開催を提案し、長官は協力を約束した。
パキスタンの安定は、アフガンの治安回復と同様、国際テロ抑止に不可欠な要素だ。日米が主導的役割を担うことが求められる。
金融危機や地球温暖化の対策でも、日米が様々なアイデアを出し合い、緊密に連携したい。
クリントン長官と民主党の小沢代表との会談は、小沢代表側が消極的で、日程調整が難航した。
民主党が政権交代を本気で目指すなら、米政府高官と気兼ねなく会い、生産的な会談ができる環境を整えておく必要があろう。
そのためには、インド洋での海上自衛隊の給油活動や、米海兵隊普天間飛行場の沖縄県内移設に反対したままでいいのか。外交・安全保障に関する本格的な党内論議を避け続けるべきではない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090217-OYT1T01059.htm