五ヶ瀬町の県立五ヶ瀬中等教育学校5年の浜本志穂さん(17)が、高千穂町で発生した砒素(ひそ)中毒被害の「土呂久(とろく)公害」に関するテキストを作った。従来の書籍にあった難解な表現や言葉をより分かりやすく、中学生が理解できるようにまとめた内容になっている。校内で19日、同校3年生に発表する予定で、「後輩たちが書き足す形で受け継いでくれれば」と話している。(甲斐也智)
テキスト作りのきっかけは2007年7月、環境に関する総合学習で、土呂久を訪ねたことだった。砒素が原因で一家7人が亡くなった古い住宅跡や荒れ果てた鉱山跡を回り、隣町で発生した公害のひどさに初めて気づかされた。衝撃を受け、帰った後に友人とも話しをしたが、周囲の反応は鈍かったという。
関連の書物を読み進めるうちに、「自分と同じように、若い世代ほど公害の実態を知らない。これまでの本には難しい言葉が多く、中学生向けが少ない」と感じ、総合学習のテーマとして独自に作ることを思い立った。
昨年9月、土呂久公害被害者の支援者らを中心に結成したアジア砒素ネットワーク(AAN、宮崎市)に手紙を出し、テキスト作成へ助言を求めた。11月には、福岡市であったアジアの砒素汚染フォーラムに出席。今年1月19日には、AAN本部を訪ね、上野登代表から最終添削を受けた。
テキストはA4判10ページの冊子で、「亜ひ焼き始まる」「小学校教師による告発」「訴訟、裁決そして和解へ」などの項目に分類。1920年から鉱石を焼いて砒素を取り出すようになった経緯や訴訟の様子、アジア各地の砒素汚染解決への取り組みも盛り込んだ。
冒頭ではこう呼びかけている。「環境問題を学んでください。そして語り継いでください。あなたたちから行動することできっと未来の環境は大きく変わってくると思います」
上野代表も「子ども向けの本はこれまでなかった」と話し、浜本さんの取り組みを高く評価している。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20090217-OYT8T00946.htm