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2009年02月18日(水) 00時00分

被害者参加裁判 判決前に異例の説諭読売新聞

那覇地裁、裁判長が被告に謝罪促す

 犯罪被害者や遺族が刑事裁判で被告に質問したり、求刑への意見を述べたりできる「被害者参加制度」が適用された九州・沖縄で初の公判が17日、那覇地裁で開かれた。昨年2月、婚約中の男女が沖縄県内を軽乗用車でドライブ中、乗用車に追突され死亡した自動車運転過失致死罪を問う裁判。被害者2人の父親は被告人質問で何度も感情を高ぶらせて「全然罪の意識がない」と詰め寄り、吉井広幸裁判長が被告人に謝罪を促す異例の場面もあった。

 被害者2人のそれぞれの両親と兄の計6人が参加。父親2人が検察官の横に座り、罪状を認めた沖縄県南城市佐敷のアルバイト屋良景介被告(21)に2人で計約30分間、質問した。

 女性の父親は「今年2月に謝罪の手紙が来た。弁護人が助言したのか」と尋ねた。屋良被告は「事故の事を説明する責任があると思った」とした。内容については「だいたいは一人で考えた」としたが、追及されると「両親や弁護士のアドバイスも受けた」と述べた。

 男性の父親は「法廷で初めて被告と会った。なぜ謝罪に来なかった」と追及。さらに、「2人は夢を描いていた。あなたが被害に遭うべきだった」と質問ではない発言もあり、吉井裁判長が繰り返し制止した。

 屋良被告は「遺族の気持ちが落ち着いていないと思った」と謝罪に行かなかったことへの釈明を繰り返した。これに対し、吉井裁判長は「事故後の対応で、遺族の感情はますます害された。何か言っておくことは」とただした。屋良被告が裁判官席を向いたまま発言しようとすると、「それじゃダメですよ。向き合わないと」と説諭し、父親2人に向かって謝罪の言葉を述べさせた。

 被害者女性の兄・喜屋武(きゃん)浩行さん(35)は終了後の記者会見で「感情がたびたび高ぶったが、これが遺族の感情なんだと被告に伝わったと思う」と語った。参加人代理人の赤嶺真也弁護士は、裁判長が被告に謝罪させた訴訟指揮について「被害者が法廷にいることへの配慮が働いたのでは」と分析した。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okinawa/news/20090218-OYT8T00456.htm