名古屋市中区の市営地下鉄桜通線久屋大通駅で昨年5月、上りエスカレーターが急停止後に後退し14人が軽傷を負った事故で、愛知県警捜査一課と中署は、事故7カ月前に実施した補強工事の溶接作業がずさんだったことが原因と断定した。19日に、業務上過失傷害の疑いで、事故機の製造元で工事も担当した日本オーチス・エレベータ(東京都中央区)の社員ら5人を書類送検する。
書類送検するのは、補強工事を指示したオ社東京本社課長と中部支社の3人、下請け会社の1人。市交通局と保守点検の委託会社は、事故の予見は難しいとして立件を見送る。
事故は、昨年5月9日午前8時15分ごろに発生。約20人が乗ったエスカレーターが急停止後に20メートルほど後退した。事故後、県警や市が最上部の機械室を調べると、駆動装置などが載った鉄製架台を固定するボルト10本のうち9本が外れるなどし、架台は元の位置からずれていた。
この事故機は一昨年9月、オ社の点検で架台を固定するボルト6本のうち2本が折れているのが判明。同社は折れたボルトを残したまま新たに4カ所に補強金具を溶接、ボルト各1本を埋め込んで架台をエスカレーターの骨組みに固定した。
捜査関係者によると、この補強工事の設計や溶接作業が不適切だったため、エスカレーターが動くうちにボルトや補強金具が外れ、架台そのものが骨組みからずれた。このため、エスカレーターは停止し、利用者の重みで後退した。
事故機は再び工事を実施し、昨年10月に運転を再開している。
(中日新聞)