和歌山東署で2004年、防声具を取り付けられた男性容疑者=当時(52)=が死亡した事件で、遺族が国と和歌山県に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は18日、和歌山県に約5800万円の賠償を命じた。国への請求は棄却した。
防声具は、留置場で大声を出す容疑者らに使われる拘束具の一種。警察庁は事件後、使用を中止したが、06年5月から改良して使用を再開している。判決理由で小野憲一裁判長は「将来的には、刑務所や拘置所と同様、全留置施設に容疑者らを隔離できる保護室を整備し、防声具を使用しないことが望ましい」と当局に求めた。
事件では、当直責任者と留置担当官の計3人が業務上過失致死罪でそれぞれ罰金50万円の略式命令を受けた。
判決は「使用はやむを得なかったが、規定に違反した使い方をした上、監視も不十分だった」と指摘し、死亡との因果関係を認定。さらに3人に加え、「使用方法の教育を尽くしていれば死亡を回避できた」と署長と留置主任官の責任も認めた。県警本部の留置管理官と、警察庁の責任は否定した。