「周りに支えられ、幸せでした」。生まれつき手足がないハンディを乗り越え、愛知県豊川市の私立豊川高校に通い続けた佐野有美(あみ)さん(18)が二十日、卒業式を迎える。卒業後の就職先は決まっていないが、地元企業などから複数の誘いがあるといい、「健常者と同じように働きたい」と意欲的だ。
佐野さんは、小学校教諭でスポーツライターの乙武洋匡さんと同様、原因不明の先天性四肢欠損症。左足の三本指だけで電動車いすを操り、筆記や食事など器用にこなすが、トイレの介助など、日常生活で周囲の人たちの協力は欠かせない。
高校へは毎日、母親の初美さん(52)が送り迎えし、昼ごろに弁当を届けた際にトイレの介助をしてきた。
入学当初は、ちょっとしたことを頼むにも「迷惑じゃないの」と感じた。「何、遠慮してるんだろう」と思うクラスメートとすれ違いもあったが、チアリーディング部に入って一変。演技の司会や時計係としてチームをまとめ、仲間と本音をぶつけ合った。自信が生まれ、持ち前の明るさが前面に出てきた。正門近くで練習し、来校した人に真っ先に声を掛ける。佐野さんの笑顔が「学校の顔」でもあった。
最近は、進んで介助を買って出たり、自宅近くまで一緒に帰ってくれたりする仲間もできた。「いい友達と卒業できてうれしいが、別れるのは寂しい」
今、地元のメーカーや金融機関などを回る就職活動の真っ最中。障害者雇用枠で採用する誘いが多くある。事務系の仕事が希望だが「将来は、体験を本に著すなど自分を表現する仕事をしたい」と夢を膨らませる。
(東京新聞)