中川昭一財務相の辞任により、衆院解散・総選挙の時期はますます見えなくなった。麻生太郎首相が衆院解散を断行する力はなくなったとの指摘の一方、野党側がさらに勢いを強め、早期解散に追い込まれるなど、さまざまな見方が交錯している。 (吉田昌平)
「もう、選挙は任期満了しかないだろ」。首相側近の一人は十七日、こう漏らした。今回の財務相の辞任で首相の国民人気がさらに低下するのは避けられない。
ほとぼりが冷めるのを待つしかなく、「麻生内閣では任期いっぱいの衆院解散・総選挙となるだろう」(加藤紘一元幹事長)との見方が強い。裏返せば、麻生首相が首相である以上、二〇〇九年度予算成立後の早期解散はできないということだ。
中川氏辞任の衝撃は「選挙に与える影響とかの次元を超している」(古賀誠選対委員長)というほど大きい。このまま任期満了まで麻生政権が延命できると思っている議員ももう、ほとんどいない。
弱体化した麻生政権は、今後の予算審議で野党の攻勢に耐えられない可能性が強く、逆に四月解散に追い込まれかねない。石原伸晃幹事長代理はこの日の民放テレビ番組で、「大きく混乱した時は、国民に信を問うのが民主主義の原点。早期の解散も念頭に、国民に何を訴えるのかを示していく時期が近づいたんじゃないか」と予測した。
麻生政権が大きく揺らぐ中、与党はこれ以上の解散引き延ばしもできない苦境に追い込まれているのは確か。与野党の間で、〇九年度予算成立後の「話し合い解散」が現実味を帯びる可能性もある。
◆審議やり直し 野党が要求も
中川財務相が二〇〇九年度予算案の審議中に辞任したことを受け、野党からは審議のやり直しを求める声が高まっている。
衆院事務局によると、予算案審議中に担当閣僚が辞任した例は、一九九八年一月に旧大蔵省の汚職事件で引責辞任した三塚博蔵相だけ。
この時は、事件の責任追及を優先した野党側が、蔵相辞任を要求して九七年度補正予算案の審議を拒否していた。
このため、辞任と引き換えに、予算案は審議をやり直すこともなく、その日のうちに衆院を通過している。
国会には、予算案の審議中に閣僚が交代した場合の「審議やり直し」を定めた法律や規則はなく、野党の要求が通る可能性は低いとみられる。
(東京新聞)