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2009年02月17日(火) 16時23分

ノーベル賞・南部博士の半生描くスライド…ろうそくで勉強も読売新聞

南部陽一郎さん

 ノーベル物理学賞を受賞した、米国在住でシカゴ大名誉教授の南部陽一郎さん(88)が、自らの半生をスライド形式に写真18枚で紹介する「My life(私の人生)」をパソコンで作成し、日本での自宅近くにある大阪府豊中市立上野小学校に贈った。

 ろうそくの明かりを頼りに一心に勉強する学生時代の貴重な写真や、アインシュタインとの交流を示す写真にそれぞれコメントをつけ、研究一筋の姿勢を子どもたちに示している。18日の同小の創立60周年記念式典で披露される。

 同小の中木常雄校長が式典に合わせてメッセージをもらおうと、昨年11月、豊中市に住む南部さんの親族を通じて手紙で依頼。中木校長がシカゴの日本人学校で勤務した経験があることを知った南部さんは「不思議な因縁です」と快諾し、今月12日にデータが入ったフラッシュメモリー(電子記憶媒体)が届いた。

 中木さんらが確認すると中にはパソコンで作られたスライドショーが入っていて驚いた。東京で生まれて福井市で育ち、東京帝大を卒業後、31歳で渡米するなど、南部さんがノーベル賞を受賞するまでを写真でたどり、簡単な英語で説明していた。

南部さんのスライドショーの1枚。「I studied hard.」というメッセージが添えられている(大阪府豊中市立上野小提供)

 ろうそくで勉強する写真は、17歳で勉学のために東京に戻った写真の後にあり、「I studied hard.(私は一生懸命勉強した)」と紹介。同じノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹氏や朝永振一郎氏らと一緒の写真には「多くの人々から物理学を学んだ」。幼い息子らと遊ぶ写真もあり、「ブーチャン」と呼ばれていたと書き添え、気さくな人柄もうかがわせる。

 保護者や地元住民向けに文章も別に添えられ、「何かお役に立ちたいと考えたあげく、私自身が受けてきた教育の経験を語ることにいたしました」と説明。「小学校時代から科学、数学に興味を持ち始め、程度が高すぎる問題でも自分で何とか考えてみることを楽しみました。これは私の一生の基本的な態度となりました」などとつづっている。

 中木校長は「返事をいただけるとは思っていなかった。一生懸命努力してきたことに対する誇りが感じられる内容。優しいおじいちゃんという印象も受けた。ぜひ子どもたちに見せ、学校の宝物にしたい」と感激している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090217-OYT1T00337.htm