不況の中、雇用維持のために仕事を分け合う「ワークシェアリング」に踏み切る企業が出始めた。
目につくのは、非正社員の削減だけでなく、正社員の労働時間を短くし、賃金もカットして急場をしのぐ「緊急対応型」。一方、子育て中の主婦など個々の事情に合わせ働き方を選ぶ「多様就業型」に取り組む企業もあるが、簡単に普及しそうにない。スマートな言葉の響きとは裏腹に、定着までに一方ならぬ苦労があるようだ。
◆緊急対応型◆
「雇用を守るには他に選択肢はなかった」。富士通労働組合の山形進委員長は厳しい表情でそう語る。
富士通の半導体子会社「富士通マイクロエレクトロニクス」(東京)は先月、国内3工場の正社員約5000人のうち、製造部門の社員の労働時間を3分の2にし、賃金も下げた。グループ全体で派遣社員550人を3月までに削減予定で、役員報酬もカットするが、「まだ不十分」(富士通の広報担当者)と、正社員の時短に踏み切ったのだ。
派遣社員1600人、期間従業員400人の削減を決めたマツダ。先月には2工場で夜間操業を中止し、正社員の労働時間と給料を減らした。労組幹部は「我慢するしかない、というのが組合員の声」と話す。
◆多様就業型◆
データ入力・加工会社「エス・アイ」(兵庫県姫路市、従業員約70人)では、1991年の設立当初から残業をなくし、月168時間を上限に自由に出退勤できる制度を導入した。
当初は、作業効率を上げるため、正社員の残業分をパートに担ってもらうのが目的だった。しかし、正社員は月給制で、パートは時給制。給料差から両者に溝ができ、職場の雰囲気が悪くなってしまったという。
そこで、97年から3年かけて正社員の給料を時給制にし、パートも正社員も同じ評価基準で昇給を決めた。「優秀なパートにいかに残ってもらうか。同じ給料体系にしたのが成功のポイント」と社長の今本茂男さんは振り返り、「正社員とパートの意識の差を埋めるのが難しかった」。子育て中の母親や障害者の雇用も生み出す形となり、「不況対策ではなく、家庭と仕事の両立という視点でワークシェアを考えるべきだ」と話す。自治体や大学教授らの視察が相次いでいるという。
厚生労働省では、ホームページに短時間勤務制度を紹介するコーナーを昨年12月に開設。3月までにマニュアルも作る。担当者は「不況対策に直結しないが、潜在雇用を生む効果はある。マニュアルで、どんな業種でも導入可能だということを訴えたい」と話す。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090217-OYT1T00565.htm