すきあらばオオカミに変身するところが、羊のようにおとなしいまま——。そんな態度で女性に接する若い男性が増えているという。名付けて「草食系男子」。
異性と友達感覚で付き合い、酒を飲んでも乱れず、堅実な暮らしぶりが共通点だ。
「最近の20〜30歳代の男性は異性にガツガツせず、男らしさにもこだわらない」。コラムニストの深澤真紀さんは2006年、ホームページのコラムで、そんな温厚な性格の男性を「草食系男子」と名付けた。
具体例を挙げると——。30歳の男性会社員は「終電がなくなったら、女友達とラブホテルに行き、一緒に眠ります」と話す。「何もしません。ただ眠るだけ」。恋人と女友達の間に明確な線引きをしているという。
結婚情報サービス会社のオーネット(東京)が、今年度中に成人する男性に女性との交際を尋ねたところ、約8割が「相手はいない」と答えた。また、昨年度の調査では、交際相手のいない男性のうち、3人に1人が「欲しくない」と答えている。「一人が楽しい」「ほかのことに時間・お金を使いたい」ことなどを理由に挙げ、現状に満足し、異性を求める気持ちが乏しい。
深澤さんは、その背景として、〈1〉物質的に豊かな時代に育ち、何かを手に入れようとガツガツする必要がなかった〈2〉バブル崩壊後の社会しか知らないため、未来に過剰な期待を抱かず、堅実志向——などを挙げる。
こうした草食系男子の好みが、経済にも影響を与えている。例えば、自動車メーカー。かつて、スポーツタイプの車がデートの必需品とされたが、今では「維持費がかかり、エコじゃない」と関心は低い。日産自動車は02年、若者向けのコンパクトカーで、友人と自室でくつろいでいるような雰囲気を強調したところ、大ヒット。「若い男性の間では、スピードやパワーより心地よい空間が受けているようです」と同社では話す。
そんな草食系男子に対し、「リードしてくれない」「何を考えているのか分からない」と不満を募らせる、女性や中年男性も少なくない。
もっとも「草食系男子『お嬢マン』が日本を変える」という本を昨年出版した、ライターの牛窪恵さんは草食系男子に期待をかける。「彼らは男らしさにこだわらず、男女平等を自然に受け入れている。新しい時代の成熟した消費スタイルを先導するかもしれません」と牛窪さんは指摘する。
あなたの身近な所にも、草食系男子はいませんか?(生活情報部 斉藤保)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090217-OYT1T00283.htm