日本経済は、これまでにない、厳しい不況のトンネルに迷い込んでしまったようだ。
昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)実質成長率は、年率換算の前期比でマイナス12・7%と、2ケタの落ち込みとなった。
第1次石油危機時に次ぐ、戦後2番目のマイナス幅である。1〜3月期も大幅に減少し、2008年度は戦後最悪のマイナス成長が見込まれる。
日本経済は悪化のスピードを急速に増している。政府・与党は、不況脱出のための新たな処方箋(せん)を早急に示さねばならない。
海外需要を原動力とする日本の成長エンジンが、世界不況のあおりで逆回転し、震源地の欧米より急降下している。
海外の景気悪化で輸出に急ブレーキがかかり、生産と設備投資が縮小した。企業は人員削減を加速させ、失業者が急増している。
リストラの波は正社員にも広がり、内需の柱である消費がしぼみ始めた。これがさらなる生産減少を招く悪循環が止まらない。
政府は昨夏から3回にわたり経済対策をまとめた。雇用や企業の資金繰り支援など、景気悪化の「痛み止め」が中心だ。
事業規模は総額75兆円と大きいが、財政支出の真水は、定額給付金の2兆円を含めて約12兆円にとどまる。外需の不振が内需に及ぶ負の連鎖を止めるためには、財政で需要不足を補うタイプの景気対策も必要ではないか。
緊急事態なのに、景気対策を巡る国会審議は遅れが目立つ。
08年度第2次補正予算の執行に欠かせない関連法案は、成立が来週以降になりそうだ。これ以上審議を長引かせず、対策を早く実施できるようにすべきだ。
09年度の本予算も早期成立を図り、新年度から直ちに執行できる体制を整えたい。
09年度予算は当初計画より前倒しで執行するのが望ましい。さらに、切れ目なく景気を刺激するため、補正予算による追加策の検討に入る必要がある。
貴重な予算は、省エネ・環境など将来の成長分野や、学校や公共施設の耐震化など安心・安全の強化に有効に使いたい。不要不急の事業が紛れ込まぬよう、内容を精査すべきだ。
税収減は確実だ。対策の財源は国債増発で賄わざるを得まい。
国債増発による長期金利の上昇を防ぐため、日銀が国債の買い入れを増やすなど、政府・日銀の連携も必要となろう。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090216-OYT1T01075.htm