財団法人「日本漢字能力検定協会」が、公益事業では認められない多額の利益を上げていたとして、文部科学省の立ち入り検査を受けている。
問題は協会の営利体質だ。文科省は、組織や事業の見直しを含めて是正を迫らねばならない。
協会の公益事業である「漢字検定」は、1975年に受検者670人で始まったが、今年度280万人を超え、「英検」をしのぐ人気ぶりだ。京都・清水寺での「今年の漢字」の主催者でもある。
「検定ブーム」に加え、92年に財団法人のお墨付きを得たことが受検者を呼び込んだのだろう。入試や採用の評価に用いている大学や企業も少なくない。
天下りとは無縁の純民間団体だが、2006年、07年だけでも16億円の利益を出している。
さらに、理事長や息子が代表の会社への業務委託費は、年間20億円を超える。「資料館」にするとして、6億7000万円で不動産を購入し、放置していた。公益事業の利益を私物化していたと疑われても仕方なかろう。
漢字検定のような事業は民間企業でもできるが、公益法人としてやる以上、「健全な運営に必要な額以上の利益」を生じさせてはならない。だからこそ非課税扱いにもなっている。
もうけたら検定料を下げる。社会に還元する。それが筋だ。
文科省は、検定料や運営の改善を求めてきたというが、実態把握でさえ不十分だった。調査が甘すぎる。監督不行き届きだ。
関連会社の経営状況や支出の必要性を吟味し、協会の過剰利益ははき出させる必要がある。
協会自らも信用回復への抜本策を講じたうえで、出直しを図るほうがよかろう。
公益法人制度改革関連法が、昨年末に施行され、5年後には民間主導の新制度に完全移行する。
監督官庁に代わり、第三者機関が、既存法人も審査し直す。監督権限も持つ。天下りによる官との癒着排除が大きな狙いである。
認定基準として、全事業費に対する公益事業費の割合は「50%以上」と厳格化されたが、2万5000近い法人で基準を満たしているのは4割程度という。
公益法人の看板を外されれば、優遇税制で蓄えた財産は、公益目的で使い切る義務がある。
資産隠しが行われないか。もうけすぎの法人は他にもないか。
監督官庁は移行期の監視を強めるべきだ。特に天下り法人には厳正に対処せねばならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090216-OYT1T01061.htm