各地の自治体が、雇い止めやリストラなどで職を失った人たちを臨時職員として雇用する緊急対策を始めるなか、都市部の自治体では応募が伸びず、せっかくの対策が空回りしている。
応募者に条件を付けたことや、雇用期間が短いことなどが理由とみられるが、不慣れな事務作業が敬遠されているという事情もあるようだ。これに対し、地方では応募が殺到するケースもあり、対策の“成否”が分かれている。
自動車関連企業を不況が直撃し、厚生労働省調査で、職を失う非正社員らが2万人を超え、全国最多となった愛知県は、1月19日から、この景気悪化で同県内の企業を離職した非正社員を対象に、200人の臨時職員を募集した。事務補助や公共施設清掃、草木伐採などの仕事で、雇用期間は3月末まで、時給は事務補助で800円程度だった。
しかし、採用にまで至ったのは60人。臨時職員を当て込んで業務計画を立てていた部署からは「何とかならないか」という声が上がっているという。
同県就業促進課は「雇用期間が短いことがネック。時給もそれほど高くないので、民間のアルバイトの方がましと思われている」と分析。「雇用期間を延ばすなどの新たな方策を考える必要がある」としている。
群馬県高崎市は30人程度を募集したが、採用者はゼロ。あてにしていた確定申告に伴う書類整理の仕事のため、離職者枠とは別の採用で必要人数を確保することになりそうで、担当者は「ラインで製造に従事してきた人は、事務仕事はやりにくいのかも」と残念がる。
雇用期間を1か月間に限定した東京・北区は、最大200人の採用枠に5人が決まっただけ。3月末までの雇用で100人を募集した千葉市での採用は、事務補助7人、軽作業13人にとどまる。さいたま市は、原則6か月間雇用という比較的長期の条件で100人程度を募集したが、採用者はわずか4人だ。
100人の枠で採用が21人の京都府の担当者は、「対象を雇い止めされた非正社員に限定したことや、長期雇用を望む人が多いためだろうか」と話す。
都市部での応募が低調なのに対し、地方では応募が殺到したケースが多い。
青森市では「もともと雇用情勢が厳しい」として、雇い止めや解雇された人に限定せずに、3月末までの臨時職員20人を募集したところ、20〜60歳代の139人の市民から応募があった。
100人程度の枠に対し、345人の応募があったのは新潟県。こちらも雇用は3月末までだが、人事課の担当者は「仕事を失った時期や理由などの条件を設けず、ハローワークで就職活動中の人を対象としたのが集まった要因の一つ」と見ており、最終的に144人を採用した。やはり失職した時期を問わなかった徳島県も、43人の募集に125人から応募があった。
外国籍の市民が多い地域の応募も殺到した。浜松市では、50人の枠に応募した224人のうち200人が外国籍だった。長野県上田市も23人の枠に応募した146人の7割が外国籍。愛知県小牧市は採用した46人中44人、同県岩倉市は採用9人全員が外国籍だった。
ただ、自治体側がせっかく離職者を採用しても、仕事が続かない人もいる。
富山県黒部市では、市民病院の看護助手に採用された3人のうち、19歳の女性が勤務2日目で「思ったよりきつい」と辞めた。兵庫県豊岡市は6人を作業員として採用したが、1人が初日から無断欠勤し、連絡が取れなくなったという。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081209-206556/news/20090216-OYT1T01252.htm