長崎市の新市立病院建設問題で、田上富久市長は16日、市民病院(長崎市新地町)と市立成人病センター(同市淵町)を統合し、現在の市民病院の敷地を拡張して建て替えるという市の案を採用する考えを表明した。日赤長崎原爆病院(同市茂里町)と統合し、JR長崎駅近くへの移転を求めた県の案については、「用地取得の問題など不確定要素が大きい」とした。
市案は、病床規模500床とし、救急救命センター(20床)、集中治療室(16床)を整備。脳血管障害や心疾患などの急性期医療をはじめ、新生児集中治療室を設置するなど周産期医療の充実を図るとしている。医師は常勤医92人、後期研修医30人を配置する計画。
記者会見した田上市長は、県案について、〈1〉用地取得にJR貨物との交渉が必要で、その行方が見通せない〈2〉指定管理者制度の導入と日本赤十字社への指定について議論が必要〈3〉原爆病院のあり方については市民的な議論が必要——の3点を挙げ、市が目標としている2013年度中の開院に向け、「不確実な要素が多い」とした。
市案では、新たに常勤医約20人を確保する必要があるが、田上市長は「長崎出身で県外で働いている医師らに声をかける」「研修医の宿舎を準備するなど受け入れ体制を整備し、長崎大と連携したい」と述べた。
一方、田上市長からの報告を受け、記者会見した金子知事は「県の案が最終的にダメになり、残念」とし、「市立病院と原爆病院が競争して医師確保に躍起になると、民間病院がとばっちりを受け、地域医療に影響を与えると思う」との懸念を示した。
県案に市民らの反対が相次いだことに対し、「感情論が先に立ってしまったのではないか。もう少し冷静な議論がしたかった」と振り返り、今後の市との関係については、「ギクシャクすることはない。この問題がほかに影響することは全くない」と強調した。
また、原爆病院との統合を支持してきた長崎大の片峰茂学長は「市の決定は極めて残念だが、厳粛に受け止める。地域医療が抱えるさまざまな課題について、この間に行われた議論を新病院建設に反映してほしい」とのコメントを発表した。
市は、11年度中に病院建設に着手し、13年3月の開院、15年1月までの完成を目指す。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20090216-OYT8T01117.htm