野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表候補が本格始動した16日、合宿地の宮崎市には連覇を願う4万人以上のファンが詰めかけ、「サムライジャパン」のスター選手たちに熱い声援を送った。巨人を始め、プロ野球球団のキャンプ地として知られる宮崎では、WBC人気で県外からの集客に弾みがつくと期待が高まっている。(饒波あゆみ)
この日、練習会場のサンマリンスタジアム宮崎(宮崎市)の駐車場には夜明け前から車が集まり始めた。内野席はファンでほぼ満員状態になり、双眼鏡やカメラで選手の姿を追い、歓声を上げていた。
大分市の会社員矢野由加さん(27)はイチロー選手やダルビッシュ有投手らを間近で見たいと思い、午前3時に自宅を出たという。「前回の優勝には感動した。今回も世界一になってほしい」と、軽快に体を動かす選手たちにくぎ付けになっていた。
国富町の会社員日高信さん(61)の目当てもイチロー選手。「彼こそが本物の日本代表。最高レベルの練習法に注目したい」と話していた。
「せっかく宮崎に来たので、明日は巨人とソフトバンクのキャンプも回る」と話すのは、福岡市早良区の会社員野中信義さん(67)。「北京五輪では金メダルを取れなかったので、WBCではぜひ2連覇を」とエールを送った。
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選手たちを激励しようと、県と宮崎市はこの日、宮崎牛20キロや伊勢エビなどをチームへプレゼントした。
宮崎南署によると、初日は一時、周辺の道路が5キロ渋滞した。週末の人出は5万人以上となる見通しで、同署は公共交通機関の利用を呼びかけている。
みやざき観光コンベンション協会(宮崎市)にはWBCの合宿日程などを問い合わせる電話が連日100本ほどかかり、職員は休日にも出勤し、対応している。ある男性職員は「イチロー選手や松坂大輔投手らのメジャーリーガーを見られるとあって注目度がすごい」と驚く。協会は周辺にのぼりを立てたり、応援用手旗5000本をファンに配ったりして、合宿ムードを盛り上げている。
市内のホテル業界はWBC特需に沸いている。練習会場に近い青島観光ホテルでは、キャンセルが出てもすぐに埋まる状態が続く。空室状況の問い合わせも殺到し、川添忠志支配人(50)は「WBCチームには毎年でも、来てほしいぐらい」と喜ぶ。タクシー業界も、売り上げアップにつながると歓迎している。
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県内ではスポーツのキャンプ・合宿が年々増加。昨季はプロ、アマの426団体に上り、観光客は60万人と過去最高を記録し、県は経済効果を83億円と試算している。
今季は巨人やソフトバンクなどプロ野球5球団に加え、Jリーグは過去最多の18チームを数えている。協会は22日までのWBC合宿期間中だけで約10万人の観光客を見込んでおり、WBC人気が観光客数や経済効果を大きく押し上げるとみている。
飯塚実・同協会誘致部長(45)は「WBC合宿だけでなく、宮崎のさまざまな観光名所を満喫してもらいたい」と波及効果の広がりを期待している。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20090216-OYT8T00972.htm