記事登録
2009年02月17日(火) 00時00分

「いのちの電話」相談急増  雇用不安の訴えも読売新聞

24時間体制で相談を受け付けるいのちの電話のボランティア相談員

 悩みを抱えた人の話に耳を傾け、自殺防止に取り組んでいる「鹿児島いのちの電話」への相談数が急増している。不況に伴う雇い止めなどによって、経済的に追い込まれる人が多いのが要因とみられる。県内の自殺率は全国でも上位に位置するが、いのちの電話の相談員は不足気味。きょうも、いのちの電話が鳴り続けている。(松下浩子)

 2008年に寄せられた相談件数は2万1470件。07年に比べて1900件近く増えており、特に40歳代男女の仕事や自殺に関する相談が目立っている。このうち1292件は自殺願望をほのめかしたり、「今、手首を切った」などと告げたりする内容だった。

 特に昨年9月頃からは、雇用不安に関する相談が増え始め、最近は「次は自分がリストラの対象かもしれない」「彼が派遣切りに遭った。今月はしのげても来月はどうなるか不安」などのケースが寄せられている。

 いのちの電話の運営委員長の平川忠敏・鹿児島大大学院臨床心理学研究科教授(61)は「自治体の雇用対策が一段落したり、経済不安に関する報道が少なくなったりした時が怖い。万事行き詰った人が自らを追いつめる可能性がある」と懸念している。

◎ボランティア相談員不足

 1989年に開局した「鹿児島いのちの電話」(099・250・7000)は、ボランティアの相談員約150人で運営している。24時間対応で、相談員は3、4時間交代で相談に当たっている。事務局や相談室の家賃など、経費はすべて個人や団体からの寄付でまかなっている。

 現在、2回線で対応しているが、相談の急増で話し中の時も多く、つながった瞬間に「やっとつながった」と安堵(あんど)する相談者も少なくない。安定した業務のためには、相談員をあと50人は増やしたいという。

 いのちの電話では毎年、相談員養成のための講座を開いている。悩みを抱えた人への対応法をはじめ、弁護士や心療内科医などを講師に迎え、多重債務の解決や相談窓口の紹介、患者の症例報告なども行っている。

 今年度の講座の募集は終了しているが、来年度分の受講生は4〜5月に募集する予定。講座は年40回程度で受講料は約2万5000円の見込み。相談員になりたくなくても、興味がある人の受講は可。

 問い合わせは同電話事務局(099・250・1890)へ。

◎自殺2年連続500人超県内07年「早急な対策を」

 県内の2007年の自殺者数は504人で、人口10万人当たりの自殺死亡率は29・2と全国ワースト8位だった。関係者からは「早急な対策を」との声が上がっている。

 行政や企業、医療関係者らでつくる県自殺対策連絡協議会(会長=佐野輝・鹿児島大大学院医歯学総合研究科教授)の会合で報告された。

 07年の自殺者は前年に比べて3人減ったが、2年連続で500人を超えた。この10年前の1997年は412人で92人も増えていた。

 07年の詳しい内容は分析中のため、06年の現状をみると、自殺者は507人で、過去10年間では最も多かった。内訳は男性が372人、女性が135人で、男性が女性の2・5倍以上だった。年齢別では50歳代がいずれも多く、男性が114人、女性が26人だった。原因は男性が経済・生活に関する問題が約30%、女性は健康問題が約40%を占めた。

 同協議会の会合では、委員からは「『自殺者が多い県』という認識を持っている人が少ない。もっと真剣に取り組まなければならない」と、引き締めを図る発言も出た。

 県は新年度、自殺の大きな要因になっているうつ病の早期発見のため、精神科以外の医師を対象に研修会を行うほか、自殺の要因分析などを行う「自殺対策調整員」(仮称)を県の機関に1人配置するなどの予防対策を行う。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kagoshima/news/20090216-OYT8T01014.htm