「次の者、悪質喫煙者につき、氏名を公表する」。江東区役所前に、こんな張り紙が出るかもしれない。同区は歩きたばこや吸い殻のポイ捨てを全域で禁止し、指導や勧告に従わない違反者の氏名を公表していく内容の条例案をまとめた。「歩行喫煙等の防止に関する条例」案は3月の定例区議会に提出され、早ければ7月にも施行となる。(稲村雄輝)
歩行喫煙などを禁止する条例は、江東5区では墨田、葛飾、足立区にあり、足立区は違反者から過料を徴収して吸い殻減少の効果を上げている。氏名公表の罰則は江東区が初めて。区清掃リサイクル課は「マナー順守を促し、たばこの火による失火や事故を防ぎたい」としている。
条例案では、歩行喫煙と吸い殻のポイ捨てを全面的に禁止した。立ち止まっての路上喫煙も、主要駅周辺など人通りが多い場所(区が設置した公共喫煙所は除く)では禁止となる。罰金や過料は徴収せず、指導員が「注意」「指導」「勧告」を行い、従わない場合は区役所前の掲示板に氏名を公表する。同課は「過料だと『払えば終わり』ということがあり得るので」と説明している。
区は、警備会社などに指導員を委託し、駅前広場などに配置。通行人や違反者にマナー順守と条例の周知を呼びかける方針だ。
区では、1998年1月施行の「みんなでまちをきれいにする条例」で吸い殻のポイ捨てなどを禁じてきたが、最も重い処分でも「捜査機関への告発」のみ。路上・歩行喫煙については、「喫煙者のモラルの問題」として、規制を設けてこなかった。しかし、マナーは一向に改善されず、「ほかの区は条例で禁止しているのに、なぜ江東区にはないのか」などと、区民からの要望も増えてきたため、条例制定に踏み切った。
氏名公表は、23区では中央区や文京区が条例化しているが、公表実績はない。文京区は「マナー啓発が観点の条例で、氏名公表は最後の手段」としている。
江東区も狙いは同じで、小川和久・区清掃リサイクル課長は、「条例の目的は取り締まりではなく、あくまで違反の抑止。ほとんどは、氏名公表に至る前にマナー改善が図られるはず」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20090217-OYT8T00113.htm