1986年、手づくりヨット「エリカ号」で家族とともに世界一周した長江裕明(ながえひろあき)さんが6日、拡張型心筋症のため神奈川県葉山町内の病院で死去したことが分かった。60歳だった。告別式などは故人の遺志で行わない。
長江さんは三重県長島町(現桑名市)生まれ。名古屋、愛知県瀬戸市で育ち、外務省勤務を経て81年7月、自ら設計、建造したエリカ号で愛知県常滑港から当時の妻と4歳だった長女絵梨佳さんの一家3人で世界一周の航海に出発。太平洋や大西洋など約6万キロを回り、25カ国を経て同県・蒲郡港に戻る4年9カ月に及ぶ壮大な旅を成功させた。
89年から92年にかけては再び親子3人で、四輪駆動車にトレーラーをけん引して北米、欧州、アフリカなど20万キロを陸路で走破した。
95年には、ヨットや冒険好きの仲間が集まる場として、名古屋市中区で経営するレストランに併設して「地球冒険塾」を開設。大自然とのふれあいを通じた青少年の育成にも力を注いだ。
エリカ号の世界一周を記念して始まった国内最大級の「エリカカップヨットレース」は毎年5月、愛知県蒲郡市沖の三河湾で開かれている。
8年前に心臓弁膜症を発症、大手術を受けた。2005年には「エリカ2世号」で再び南太平洋の島々を航海したが、昨年9月以降は病状が悪化し、入退院を繰り返していた。
(中日新聞)