「わたしの個人的な共感や米国の懸念を伝えるために、被害者家族に会う」。クリントン米国務長官は17日の日米外相会談後の共同記者会見で、個人としても拉致問題に高い関心を持っていると語った。だが、米国の支援に対して日本側の期待が過度に高まることは、ブッシュ前政権末期にみられた日米間のずれを増幅させる結果にもなりかねない。
大統領夫人(ファーストレディー)だったころにも、人権問題で活発な発言を続けていた長官。訪日を前にした記者団との電話会見でも「拉致被害者家族の置かれた苦しい立場を忘れてはいけない」と強調。被害者に関する再調査実施で合意した昨年8月の日朝実務者協議にも触れて北朝鮮に情報提供を促すなど、拉致問題に関する“下調べ”も十分行っていることをアピール、支援を惜しまない姿勢を示した。
米政府は昨年、核問題で一定の進展があったとして北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除し、日本側に不満が募った。だが国務省当局者は6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補が「米朝協議の場では毎回必ず、拉致問題を取り上げていた」とし、拉致問題が解決していないことが米側の責任であるかのようにほのめかす日本の姿勢にいらだちを隠さない。