中川昭一財務相が先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後、ろれつが回らない状態で記者会見した問題が十六日、内閣支持率の低迷で足元がふらつく麻生政権を直撃した。麻生太郎首相は中川氏への「注意」で幕引きを図ろうとしているが、野党だけでなく、自民党からも閣僚としての適格性を疑問視する声が出ている。 (佐藤圭)
首相は同日夜、中川氏を官邸に呼び、続投を要請する一方、厳しい口調で「体調管理をしっかりしてほしい」と注意した。
首相は会談後、記者団から中川氏の任命責任を問われると「これまで確実に仕事をやってもらったと感謝している」と述べた。首相はこの会談で一件落着としたい考えだ。
しかし、自民党内では、中川氏の辞任や首相の任命責任を問う声がくすぶる。
同日夕の党役員会では、尾辻秀久参院議員会長が「体調の悪い人がこの難局を乗り切るのにふさわしいのか」と、中川氏への不安を公言した。ある若手議員は「辞めるなら早い方がいい。あんな姿は前代未聞だ」と切り捨てた。
中川氏の「酒癖」や健康問題は、財務相就任前から指摘されていた。中川氏は自民党政調会長や農相などを歴任したが、体調不良で数日間休んだり、閣議にふらつく足で現れたりすることがあったという。
それでも首相が中川氏にこだわったのは、気心の知れた「盟友」だからだ。積極財政派の中川氏を財務相に起用し、小泉構造改革から景気回復優先への路線転換を鮮明に打ち出す狙いもあった。
それだけに、首相としては、何としても中川氏を守り抜きたい。しかも今は二〇〇九年度予算案の審議中。財務相が辞任するような事態になれば、政権崩壊に直結しかねない。
ただ、最近も郵政民営化などをめぐる発言がぶれ、自らの資質も問われる首相が、野党の攻撃と自民党内の不満に、どこまで耐えられるかは不透明だ。
「これこそ弱り目に祟(たた)り目だ。一番困っているのは首相だよ」。自民党幹部は首相の苦境を慮(おもんぱか)った。
(東京新聞)