宿泊保養施設「かんぽの宿」の売却問題で、日本郵政は十六日、応募企業の大半が景気悪化による資金調達難や将来の収益性への不安などから辞退していった経緯を明らかにした。同日午前には、総務省に入札経緯をめぐる詳細な資料を提出。同省が不正や手続きの不備がなかったかどうか検証作業に着手した。
日本郵政によると、入札はかんぽの宿など施設七十一カ所(ゆうぽうと世田谷レクセンターを含む)と首都圏の社宅九カ所について、昨年四月から入札参加企業の募集をスタート。応募した二十七社を対象に、予備審査として宿泊事業の実績や取得後の運営方針などを基準に選考し、五社が落選・辞退。この段階では購入金額の提示は求めなかった。
続く第一次審査は二十二社が対象だったが、うち十五社は景気悪化に伴う資金調達難を背景に、「(宿泊事業の)赤字額が大きい」「雇用確保が困難」などの理由で辞退。実際に応募したのは七社で、従業員の処遇や提示金額を基準に審査し、オリックス不動産(東京)とホテルマネージメントインターナショナル(神戸市)、住友不動産の三社が残った。
その後、第二次審査に当たって秘密保持の誓約書提出を求めた上で、宿泊事業の財政状況や取引先との契約内容などの詳しいデータを三社に開示。しかし住友不動産は「景気悪化が進み、将来計画がたたない」と辞退し、残った二社との条件交渉を経て、より好条件を提示したオリックス不動産に決したという。
鳩山邦夫総務相は十六日午後、日本郵政が資料を提出したことに関し「事業譲渡ではこういうのを公正というなら、私や国民と、日本郵政との間では公正についての価値判断基準がずれている」と批判した。
日本郵政は「(金額だけで決める)一般競争入札ではないが、公正な手続きだったことを理解してほしい」としている。
また日本郵政は同日、オリックス不動産と売却契約の解除で合意したと正式発表。社内に