米海兵隊岩国基地(岩国市)で民間空港が再開されることが十七日、固まった。米空母艦載機の岩国移転を見込んだ「国策」として、地方空港の新設を抑制する方針の国が特例扱いで推進する。ただ、隣接空港とのパイの奪い合いとなる懸念もあり、安定的な集客が今後の課題となる。
「民間空港を起爆剤に地域の活性化に結びつけたい」。この日午後、政府方針の連絡を受けた岩国市の福田良彦市長は力を込めた。
一日四往復の東京便を念頭に全日空が就航を予定。県は、周南市以東の山口県東部に加え、広島県側の大竹市と廿日市市、広島市佐伯区の一部を含めた年間四十三万人の需要があると予測する。
東京便が一日十五往復する広島空港(三原市)への影響について、広島県の丸山隆英空港港湾部長は「全容が見えず言いようがない」と言葉を選ぶ。同空港のある関係者は「ビジネス客には、乗り遅れてもすぐに次の便がある広島空港の方が便利。岩国の影響は大きくない」とみる。
広島西飛行場(広島市西区)の東京便復活を目指す広島市の取り組みへの影響を指摘する声もあるが、市は岩国民空の需要予測に疑問を呈する。右近元昭空港担当部長は「東京から離れる岩国に行き、飛行機に乗るのは心理的に考えにく」と強調。広島側の集客圏は岩国市の隣の「大竹市辺り」にとどまるとみる。
一方、山口県では、東京便が一日八往復する山口宇部空港(宇部市)への影響は必至。〇六年の調査で県内利用客の15%を占めた周南市以東の客は岩国に流れる可能性がある。
不況の中、本年度の利用者は一月末時点で前年度の96・6%。日本航空と全日空の二社運航となった〇二年度以降で最低だった前年度を下回るペースだ。
県交通運輸対策室は「県東部から山口宇部空港を利用する客はもともと少ない。パイの食い合いにはならない」と強調するが、東京便の減便を懸念する声もくすぶっている。