【プノンペン=田原徳容】1970年代のカンボジアで200万人近くの大量虐殺に関与したポル・ポト政権元幹部を裁く特別法廷が17日午前9時(日本時間同11時)、プノンペン近郊の国軍施設内で開廷した。
国際法の「人道に対する罪」などに問われた元政治犯収容施設「ツールスレン尋問センター」の元所長カン・ケ・イウ被告(66)が初公判に出廷し、証人申請などの手続きが進められた。世界最大級の大虐殺を裁く注目の裁判は、政権崩壊から30年の節目となる今年、ようやく緒に就くことになった。
起訴状などによると、同被告は、ポル・ポト政権(75〜79年)下のプノンペンに設置された尋問センターで、約1万6000人を拷問し、死亡させたなどとして、人道に対する罪など三つの罪に問われている。被告は罪を認めているとされ、数か月以内に結審し、判決が下される見込みだ。
国連とカンボジア政府が2006年に共同設置した特別法廷は、国内法手続きにこだわるカンボジア人判事と国際法廷を基準とする外国人判事との調整が難航、資金難も加わり、当初予定から1年7か月も開廷が遅れた。
2審制で、最高刑は終身刑。同被告以外に、ポト派ナンバー2のヌオン・チア元人民代表議会議長(82)ら4人が身柄を拘束されているが、起訴されておらず、公判開始の見通しは立っていない。ポト派の最高指導者だったポル・ポト元首相は98年に死亡している。
初公判を迎えた特別法廷前には、遺族を含む被害者や僧侶、各国関係者らが早朝から詰めかけた。
◆ポル・ポト派特別法廷◆
カンボジア政府が運営し、国連などが支援する特別法廷で、ポル・ポト政権時代の幹部の「人道に対する罪」などを裁く。カンボジア人17人と国連推薦の10か国12人の計29人が、判事や検事を担当。元東京地検検事の野口元郎氏が2審の判事として参加する。判決では、少なくとも外国人判事1人の同意を必要とする。日本は法廷運営資金の最大の援助国で、当初予算の4割に当たる約20億円を拠出。先月11日には、約24億円の追加拠出を表明した。