戦時中最大の言論弾圧事件「横浜事件」で、治安維持法違反で有罪が確定した出版社「改造社」の元社員、小野康人さん(1959年死去)の再審の初公判が17日、横浜地裁(大島隆明裁判長)であった。
検察側は同法の廃止などを理由に、有罪・無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」とすべきだと主張。弁護側は「横浜事件は司法による犯罪であり、無罪で初めて被害者全員が救済される」として無罪判決を求め、即日結審した。判決は3月30日。
再審を申し立てていたのは、小野さんの次男・新一さん(62)と長女・斎藤信子さん(59)。小野さんは、共産主義を啓蒙(けいもう)する論文の編集に関与したなどとして、神奈川県警特別高等課(特高)に逮捕され、1945年9月に懲役2年、執行猶予3年の判決を受けた。
公判では、大島裁判長が当時の訴訟記録が失われていることに触れ、「保存するのに不都合な理由があったために廃棄されたことは、誠に遺憾」と、当時の司法の対応を批判した。新一さんと斎藤さんは、小野さんの口述書などを朗読し、特高による拷問の様子を証言した。
大川隆司弁護団長は閉廷後の記者会見で、「司法の責任を正面から見据えた、血の通った判決文を書いてほしい」と述べた。
別の元被告らが申し立てた再審では、最高裁で08年3月に免訴が確定している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090217-OYT1T00815.htm