北極海や南極海の生物は、これまで考えられていたよりも多様性が豊かだが、過去約20年間で生息域が最大500キロ移動した生物もいるなど、地球温暖化の影響も顕在化しているとの調査結果を、日本も参加する国際調査チームが15日発表した。
地球の北端と南端に位置するにもかかわらず、両者には極めて似通った生物が多く生息することも判明。チームは「南極域から生物が、北極も含めた広範囲に分布域を広げていった可能性がある」としている。
調査は、国連が中心になって2010年までの10年がかりで進めている「海洋生物センサス(調査)」の一環。07年から08年にかけて計28回行った観測船による調査に過去の研究結果を加え、北極域に5500種、南極域に7500種の生物が生息することを確認した。このうちクリオネの仲間など235種が、南北両極に共通した種とみられる。
一方、ベーリング海峡の北のチュクチ海では、海底にすむ魚の一種や小型の甲殻類の分布域が過去20年間で最高500キロ北上、ノルウェー沖の北極海では端脚類と呼ばれる生物のうち、冷たい水を好む種の数が減り、比較的暖かい水を好む種の数が増えるなど、温暖化による生態系の変化が確認された。
同様の変化は南極域でも確認され、チームは「生物の進化を考える上でも重要でユニークな極域の海の生態系が、温暖化によって脅かされていることは明らかだ」と指摘している。
調査には日本、米国、オーストラリアなど25カ国から約500人の研究者が参加した。