相次ぐ振り込め詐欺の被害を食い止めようと、警視庁は16日、現金の引き出し役となった10人の画像を一挙に公開した。
引き出し役は詐欺団の間で「出し子」と呼ばれる。いずれも現金自動預け払い機(ATM)などで撮影された画像で、警視庁は摘発につながる情報提供を呼びかけている。今年1月も振り込め詐欺の被害は都内だけで147件(約2億5000万円)に上っており、今回の一挙公開には詐欺団を強くけん制する狙いもあるようだ。
発表によると、公開した画像は昨年1〜10月、都内のコンビニエンスストアや金融機関のATMに設置された防犯カメラで撮影されたもの。いずれも息子などを装うオレオレ詐欺事件の「出し子」で、顔や服装、手口などを分析した結果、多数回にわたって現金を引き出した10人を選別し、公開した。
写真1・2008年3月中旬に八王子・立川市内のコンビニで5回引き出し・約240万円
写真2・2008年1月下旬〜7月中旬に江戸川区内のコンビニで56回引き出し・約1530万円
写真3・2008年7月初旬〜10月下旬に品川、千代田、中央区内のコンビニで4回引き出し・約150万円
写真4・2008年9月初旬〜下旬に目黒、新宿、豊島区内のコンビニで14回引き出し・約540万円
写真5・2008年7月初旬〜8月初旬に中野、杉並、渋谷区内のコンビニで6回引き出し・約140万円
写真6・2008年5月下旬に杉並、中野、練馬区内のコンビニで13回引き出し・約490万円
写真7・2008年3月中旬〜下旬に千代田、中央、江戸川区内のコンビニで66回引き出し・約1270万円
写真8・2008年2月中旬〜3月中旬に北、文京、豊島区内のコンビニで17回引き出し・約610万円
写真9・2008年7月中旬〜8月初旬に港、杉並、板橋区内の銀行などで20回引き出し・約1000万円
写真10・2008年3月下旬〜5月下旬に千代田、新宿区内のコンビニで14回引き出し・約600万円
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このうち、最高額の計1530万円を引き出していた人物=写真2=は、江戸川区内の複数のコンビニATMで、計56回にわたり現金を引き出した。被害者の中には650万円を振り込んだ杉並区内の91歳の高齢女性もいたが、詐欺団は摘発されていない。
また、千代田区などで66回にわたって計1270万円を引き出していた男=写真7=は、380万円を振り込んだ武蔵野市内の女性(76)を含め被害者が8人に上っている。同庁で分析したところ、「出し子」は1日に複数のコンビニを回って現金の引き出し場所を変える手口が特徴だったという。
このため、同庁は16日から、一覧にしたチラシを都内のコンビニや金融機関に掲示してもらい、情報の提供を呼び掛ける。
同庁は昨年10月、「出し子」4人の画像を初めて公開した。その際、「似ている男を知っている」などの情報が計62件寄せられ、それをもとに捜査を進めており、今回も大きな期待を寄せている。
警察庁によると、昨年1年間の全国の振り込め詐欺の被害は、前年より24億5000万円増え275億9400万円。件数も前年比2551件増の2万481件に達した。都内の被害も昨年は3718件、59億9000万円に上った。
警視庁は、誘拐事件の捜査を行う捜査1課特殊班の経験者などでつくる「ステルス・チーム」を結成するなど摘発を強化。さらに今月には、振り込め詐欺担当捜査員を700人から1000人に増強したほか、都内の約20万人の防犯ボランティアに5人以上の親族、友人に注意を呼び掛けてもらう「100万人運動」を開始、振り込め詐欺の根絶を目指している。
情報提供は「振り込め詐欺ホットライン」(03・3501・2967)へ。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090216-OYT1T00561.htm