歯止めがかからない世界不況に対し、各国がさらなる景気刺激策で協調する必要性が、強く打ち出された。
ローマで開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の共同声明は、成長と雇用を支え、金融市場を安定させるため、政策を総動員する決意を明確にした。
特に、「財政政策を前倒しで迅速に実施する」ことで一致した点が、注目されよう。
金融危機は実体経済を急速に悪化させ、今年、日米欧は戦後初めて、そろってマイナス成長に陥る見通しだ。それに伴い、各国で失業が急増している。
共同声明が、世界経済の悪化は年内いっぱい続くと認めたほど、現状は厳しい。
日米欧の中央銀行は、歴史的な超低金利政策や量的緩和策に踏み込んでいるが、その効果は限定的だ。不況が長期化するシナリオが現実味を帯びつつある。
追加利下げ余地が乏しい中、G7は、財政政策を重視する姿勢を鮮明にしたといえよう。
危機の震源地の米国では、議会が公共投資と減税を柱にした8000億ドル(約72兆円)規模の景気対策法案を可決した。
350万人の雇用創出を目標とする景気対策法案は、オバマ大統領が掲げる経済再生の第一歩だ。迅速に執行してほしい。
日本と欧州も米国と協調し、世界不況の封じ込めに総力戦で取り組まなければならない。
日本では、来年度補正予算案の編成構想が浮上してきた。景気刺激に即効性のある施策が求められる。財政赤字拡大という問題もあるが、前向きに検討すべきだ。
一方、国内景気を重視するあまり、自国産業を優遇する保護貿易主義的傾向が各国で高まりつつある。G7が保護主義の回避を声明に盛り込んだのはこのためだ。
米景気対策法案に、米国産品を優先的に購入するという「バイ・アメリカン条項」が残ったことが懸念される。
法案は国際協定に反しないように運用するとしているが、基準はあいまいだ。米国はG7声明に沿い、保護主義圧力を排除しなければならない。
声明はまた、中国の財政出動と人民元の上昇を歓迎した。中国の役割への期待を示すものだ。
中国、インドなどを加えた2回目の金融サミットが4月に開かれる。G7がそれまでに効果的な処方箋(せん)を書けるかどうかが、サミットの成否のカギとなろう。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090215-OYT1T00952.htm