離島便などを運航する第3セクターの航空会社オリエンタルエアブリッジ(ORC、本社・大村市)の再建策について、離島3市や経済団体などでつくる県離島航空路線再生協議会(上田恵三会長)が報告書を策定。1月には県、ORC、全日空の3者で業務提携の基本合意書を取り交わすなど、経営立て直しに向けて動き始めた。(松本晋太郎)
ORCは長崎と壱岐、五島、対馬などを結ぶ5路線を運航。2005年度には単年度黒字を達成したが、燃油価格の高騰が経営を圧迫。3年連続の値上げにより利用客離れが進むなどし、07年度末には累積赤字が8億4000万円に膨らみ、08年度に資本金を超過する恐れも指摘された。
このため、県がORCに2億5000万円を助成するとともに、同協議会で再建策を検討してきた。
報告書では、赤字路線を見直し、利用客が見込める福江(五島市)—福岡線に新たに参入する。また、離島路線の赤字解消のため約9000万円の新たな補助制度を導入し、県が7割を負担。3市はそれぞれ500万円の負担に加え、路線の赤字額に応じて支出する。県はこうした補助を県離島航空路線確保対策事業(2億7200万円)として、新年度の一般会計当初予算案に盛り込んだ。
再建策で柱となるのが全日空との業務提携だ。ORC全路線を全日空との共同運航とし、全日空の予約販売システムで航空券を販売。利用客は全日空のマイレージサービスなどを受けることもできるようになる。「ANAブランド」による利用客の増加で1億6300万円の増収。さらに、ORCの販売窓口が不要になるなど経営の効率化により、1億7000万円の支出削減をもくろむ。
これらの再建策により、同社の収支は09年度から単年度黒字に転換。将来的には年間5000万円の黒字を維持できる経営体質への改善が果たせると見込む。
ただ、決して楽観できる状況ではない。県交通政策課の西元英隆課長は「あくまで、経営破綻(はたん)など最悪の事態を避けるための措置であり、累積赤字をすべて解消することにはつながらない」と話す。生活路線だけに安易な運賃改定も難しく、「再生策の着実な実行に加え、利用客の増加など独自の努力による経営基盤の強化が不可欠」と指摘する。
「離島航空路を維持することが、委員の共通した思いだった」。利害が絡み合い、調整が難航した同協議会の議論を取り仕切った上田会長はこう振り返った。生活路線として公的支援や利用者負担はどうあるべきなのか。海上交通も含め、離島と本土との総合的な交通体系をどう描いていくのか。今後も継続した議論が必要だ。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20090215-OYT8T00937.htm