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2009年02月16日(月) 00時00分

60歳代 美の現役読売新聞


美容部員のアドバイスを受けながらメークしていく。女性の表情がどんどん明るくなった(日本橋高島屋の「キッカ」のカウンターで)=今利幸撮影
シニア向け化粧品 次々

 「60歳代から」の女性向けの化粧品が相次いで登場している。発売したのは、カネボウ化粧品と資生堂で、それぞれ「ニッポンのマダムを恋する瞳にする」「年を重ねた美しさを引き出す」などと、宣伝に力を入れる。なぜ今、60歳代からの化粧品なのか——。

 カネボウ化粧品は昨春から、新ブランド「キッカ」を百貨店で展開している。ファンデーション(1万500円)やアイシャドー(7350円)など計51品目をそろえる。対象は、ファッションの感度の高い「50歳代後半から60歳代女性」が中心。団塊世代も含んでいる。

 「この年代の女性たちの意識が、従来とは大きく違う」と、同社のブランド担当者、浅香純子さんは指摘する。60歳代と言えば、かつては第一線を退くイメージもあった。しかし、「今の60歳代は活動的で、美しくあり続けたいという女性としての“現役感”も強く持っている」。

 一方、資生堂は昨年11月、「60歳代以上」の女性のためのスキンケア商品「エリクシール プリオール」を発売した。「肌に張りとうるおいを与えることで美しさを保とう」と提案する。化粧水(参考小売価格3465円)や乳液(同3990円)など5品目をそろえている。

 こうした化粧品の開発は、高齢化が背景にある。資生堂の昨年の調査では、60歳代女性が化粧品を購入した市場の規模は約6700億円(店頭売り上げベース)で、国内市場全体の2割を占め、今後も成長が見込まれる。さらに60歳代の女性に調査したところ、「使いやすい化粧品がない」との不満を持つ女性が5割もいた。「そこで新ブランド作りに取り組んだ」と同社。

 これまで、化粧品開発といえば、若い女性向けの商品が中心だった。1970年代後半から80年代にかけ、資生堂とカネボウ化粧品が熱いCMソング合戦を繰り広げた。「君のひとみは10000ボルト」(資生堂・78年)、「君は薔薇より美しい」(カネボウ化粧品・79年)などがヒットしたころ、団塊世代の女性たちは30歳前後だった。その団塊の女性たちが60歳代に入り始め、今度はシニア向けの化粧品の販売競争が始まっている。

 シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんは、「今の60歳代は見た目も考え方もずいぶん若くなっている。しかも若い世代より購買力もある。今後、他のメーカーも『60歳代から』の化粧品を次々に開発してくるだろう」と話している。

年齢うたわず宣伝…女心にも配慮

 「60歳代からが対象」などと年齢を絞って販売する化粧品は、販売促進や宣伝の中で、どこまで「60歳代」という数字をうたっていくか、メーカーは神経を使っているようだ。実際に本人が60歳代であっても、「他人から『60歳代ですね』と商品を勧められるのは嫌」という繊細な女心があるからだ。

 資生堂は社内で議論の末、小売店への営業などの際には、ターゲットの年齢層をはっきり伝えて販売戦略を練るが、テレビ・新聞広告では「60歳」とはうたっていない。

 カネボウ化粧品の「キッカ」でも、商品のパッケージには一切対象年齢の記載はないという。

 また、シニア世代には、化粧を不得手とする女性も少なくない。例えば、顔だけ白く塗り過ぎてしまうメークもしばしば見られる事例。そこで「キッカ」のカウンターでは、〈加齢の影響でまぶたの皮膚がまつ毛の際まで下がっている場合に、どうメークするか〉など、美容部員が時間をかけて丁寧にアドバイスする。

 「目元や唇などのメークのコツを覚え、海外のマダムのようにきれいになってほしい」と浅香さんは話す。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20090216ok01.htm