神奈川県自然環境保全センター(厚木市)がオリジナルの「無花粉スギ」の試験生産に取り組んでいる。自前で発見した無花粉の品種に、県内の気候風土に適した品種を交配させた種を育て、花粉が出ないスギを生む計画。究極の花粉症対策は大詰めの段階で、同センターは無花粉スギの来春出荷を目指す。
(厚木通信局・藤浪繁雄)
無花粉スギは、富山県などで発見されている。だが、県内とは気候など生育環境が異なるほか、生育方法によっては病虫害に弱いため、同センターは独自の生産と普及を目指し、十年以上前から研究を続けている。
研究グループは、花粉の少ない県内産スギの中で優良な品種を選び、着花試験などを重ねていたところ、二〇〇四年に無花粉スギの苗木を一本見つけた。突然変異で雄花が花粉を付けないという。
この無花粉スギに別の花粉の少ないスギを選び交配。遺伝の法則上、この組み合わせでは、無花粉の品種が50%生まれる。昨年、県内の種苗業者らでつくる県山林種苗協同組合に無花粉スギの種を配布。まいてもらい、問題なく採取できるかなど研究に入った。無花粉スギを見分けるために、雄花内の袋に花粉が詰まっているか、手作業で調べることは可能。だが、機械的に効率良く種を見分けられるかが現在の課題だ。研究グループの藤沢示弘主任研究員は「実用化のため、この一年が重要」と意気込んでいる。
同様の研究は各地で進められている。かつての研究メンバーで現在、県森林課の斎藤央嗣さんは「種子レベルで出荷できれば日本初だと思う。病虫害にも強い品種として期待が集まるだろう」と話している。
(東京新聞)