新郎は「長女」だった—。島根県出雲市の30代男性が、30年以上にわたって戸籍に「長女」と記載されたままだったことが14日、分かった。男性が婚姻届を提出した際に判明。戸籍上は“女性同士”の結婚になってしまうため、訂正手続きが終わるまで婚姻届は一時お預けとなった。
出雲市によると、男性は大安の今月11日に婚姻届を出しに市役所を訪れた。翌12日に処理業務で戸籍と照合した時に記載ミスが発覚。男性は長男で2人の姉がいるが、これまでは戸籍上に長女が2人存在していたことになる。
12日夕、市の担当職員が男性宅を訪れ、記載ミスを男性に陳謝。出生届が出された時から今日まで長女扱いされていたことに、男性は怒るというより、ただただ驚いていたという。
出生届は出雲市と合併する前の旧平田市役所に提出されたもの。戸籍は当時、出生届を基に職員が手書きで記入する仕組みだった。同じ段取りで作成された住民票の方の性別欄は無事「男」となっている。
男性の名前だが「まず女性とは間違えられない名前」とのことで、市側は「単に長女と書き間違えた可能性が高い」と釈明。
訂正にあたっては、明らかに性別が判断できても、それだけでは認められず、証明する公的書類や記録が必要になる。市側は男性に母子手帳を提出してもらい性別を確認、法務局に訂正手続きを申請している最中だ。なお婚姻届は11日付扱いにされるという。
戸籍の写しは、婚姻届以外にも死亡届、遺産相続、またパスポート発行の際にも必要になる。旅券には性別が印刷されるため、誤記載を見つけやすいが、市側は男性が旅券を保持しているかどうかは確認していない。家族を含め、男性は過去に何度か戸籍書類を取った記録はあるが、記載ミスには気付かなかったようだ。
長年にわたり、戸籍上の性別は違っていたが「今回の件を除けば男性に不利益はなかったと思います」(同市)。出雲市市民課の長廻栄課長は「人生の門出にこのような大変な事態となり申し訳ない。再発防止に努めたい」と話している。
【最近あった戸籍にまつわる主なトラブル】
▼他人の子が… 2008年2月、大阪市北区役所で、2世帯の戸籍原本の子どもの記載が約1年半にわたり入れ替わっていた。戸籍原本を世帯ごとに管理するファイルに、一方の世帯の子どもの分の書類だけ紛れ込んでいたのが原因。
▼旧姓が違う 07年6月、奈良市の主婦が約15年にわたり、戸籍の旧姓が誤字で記載されていたことが判明。姓の一部の「床」という字が「庄」になっていた。本籍地を変更した際、職員がタイプライターに打ち間違えたのが原因とみられる。
▼「出生」なのに「死亡」 06年12月、奈良市で、長男の出生届が戸籍に「死亡」と誤記され、11年余り放置されていたことが発覚。出生の日付で「奈良市で死亡」と書かれていた。担当者の入力ミスが原因だが、両親は精神的な苦痛を受けたとして奈良市を提訴。双方和解し、市は両親に30万円を支払った。
▼お粗末すぎる 03年5月、大阪府摂津市の40代の会社員が、本籍を置く兵庫県浜坂町に2度も戸籍を誤記載された。初めは妻の結婚相手が会社員の実弟とされ、自分が未婚のままにされていた。2度目は長男が長女と誤記載。奇跡的とも言える立て続けの戸籍トラブルは2件とも職員の記入ミスが原因。
(2009年2月15日06時02分 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090215-OHT1T00054.htm