記事登録
2009年02月15日(日) 08時28分

「将来に響く…」西松建設元社員ら疑いつつも献金協力読売新聞

 準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)が二つの政治団体を隠れみのにし、国会議員などに企業献金をしていた問題で、同社がダミーの政治団体への会費支払いを社員に求めた際、使途や同社と政治団体の関係についてほとんど説明していなかったことが、複数の元社員らの証言で分かった。

 元社員らは疑問や不満を感じつつも、「サラリーマンとして将来に影響があるかもしれない」と考え、黙って従っていたという。同社は成績優秀者に会費を支払わせており、会社への忠誠心を利用して違法な献金を続けていた形だ。

 同社はダミーの政治団体を使って企業献金を行うため、1995年に「新政治問題研究会」、99年に「未来産業研究会」を設立。課長級以上の社員から会員を選んで、1口4万〜6万円を会費として納めさせ、その後、年2回の賞与に上乗せして補填(ほてん)していた。両団体は解散した2006年末までに政治献金やパーティー券購入などで計約4億7800万円を支出した。

 同社管理本部の元社員は03年ごろ、上司に呼び出されて「新政治問題研究会という政治団体に金を振り込んでくれないか。賞与に上乗せして返すから」と言われた。同団体と西松建設の関係や払った金を何に使うかについて、説明は何もなかった。しかし、元社員は「断ればクビにならないまでも、将来に響いたり飛ばされたりするかもしれない」と考えて従ったという。

 振り込みをした後の賞与の通知書には、総額しか書かれておらず、本当に返金されていたか分からなかった。賞与額を同僚と比べる訳にもいかなかった。「上司に詳しいことを尋ねても『余計なことを聞くな』と言われるだけと思い、黙っていた。バカだなと思われるかもしれないけれど」と元社員はつぶやいた。

 本社の課長経験者は10年ほど前、新政治問題研究会の会員に指名された。「サラリーマンだから、上司に『協力してくれ』と言われれば仕方がなかった。上に立てば、政治にも関心を持たなければならないと思っていた」と振り返る。

 1980年代後半に不動産投資を手控えた西松建設は、バブル崩壊後の不況でも他のゼネコンより財務内容が良かった。賞与も比較的高かったため、会費分が返金されていたかどうかよく分からなくても、社員の不満は少なかった。

 しかし、2000年代に入ると公共事業の減少などで経営は徐々に悪化し、賞与も減っていった。妻の分と合わせ2口を支払っていた地方支店の元課長は、賞与が前より下がると、「本当に会費分が上乗せされているのか」と不信感が頭をもたげたという。

 本社幹部の1人は管理職に昇進した直後、会員に“抜てき”され、毎年、家族分も含め計16万円を納め続けた。「何に使うか興味がなく、特に不満や疑問はなかった」と語る。

 しかし、政治団体を使った献金が、他人名義での献金や政党以外への企業献金を禁止している政治資金規正法に抵触する疑いが強いことを知り、今は憤りを感じている。この幹部は「脱法的な献金に協力させられ、こんなに腹立たしいことはない」と語気を強めた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090215-OYT1T00042.htm