住民基本台帳ネットワークの合憲性は司法の場で既に確認されている。一部の自治体が独自の判断で住基ネットに参加しないという違法状態は、早期に解消すべきだろう。
総務省が東京都に対し、住基ネットに参加していない国立市に違法状態の是正要求を行うよう指示した。やはり不参加の福島県矢祭町にも同じ措置を取るという。
地方自治法に基づく総務相の是正要求指示は初めてだ。異例ではあるが、適切な措置と言える。
国立市は2002年12月、情報漏洩(ろうえい)の危険性などを理由に住基ネットから離脱した。東京都から2回にわたり、参加するよう勧告されたが、応じていない。
最高裁判所は08年3月、一連の住基ネット訴訟で、「住民の情報が第三者に漏れる危険は生じておらず、プライバシー権は侵害しない」との判断を示している。
自治体が最高裁の司法判断を無視し、住民基本台帳法に違反し続けるのでは法治国家と言えまい。希望する区民だけがネットに参加する方式を求めていた東京都杉並区も今年1月、参加に転じた。
国立市議会は昨年9月、住基ネットに接続するよう市側に求める決議を採択している。納税の電子申告ができるなど、市民の利便性も考慮したのだろう。
国立市は、是正要求に対して不服審査を求めることも可能だが、ここは冷静な判断を下し、住基ネットに参加する時ではないか。
住基ネットは行政の効率化に貢献している。自治体から国の行政機関などに年約1億件の本人確認情報がオンラインで提供され、事務費が節減されている。
年3000万人分の年金の現況届提出や、年450万件の旅券申請時などの住民票添付が不要になり、国民のメリットも大きい。
02年8月の住基ネット稼働以来、個人情報の流出例はない。情報管理を徹底しつつ、一層の効率化と利便性を追求すべきだ。
政府・与党内では、年金や医療などの情報を一元管理する社会保障番号制度の導入論が高まっている。その場合、現在の住基カードを社会保障カードとして活用するのが最も現実的だろう。
ただ、住基カードの普及率は2・3%にすぎない。別の自治体に転居するとカードが使えなくなる、といった制度上の欠陥が影響しているのではないか。
総務省は今国会で、カードの継続使用を可能にする法改正を目指している。より便利な制度に改善する努力を怠ってはならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090215-OYT1T00004.htm