目指すべき新しいオリンピック像を国内外に強くアピールしていく。東京五輪を実現するには、それが欠かせまい。
2016年夏のオリンピック・パラリンピックの開催地に立候補している東京都の招致委員会が詳細な計画書である「立候補ファイル」を国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
シカゴ(米国)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)との招致合戦はこれから佳境に入る。4月にはIOC委員による現地調査が行われる。開催地が決まるのは、10月2日のIOC総会だ。
東京に限らず、厳しい経済状況の中での招致活動である。
1964年の東京五輪は首都高速道路建設など、都市基盤整備の起爆剤となった。今回の五輪は何をもたらすのか。招致委員会は五輪開催による経済効果を約3兆円と推計しているが、より具体的にメリットを示す必要がある。
「コンパクトな五輪」が東京のセールスポイントだ。湾岸地区に新設するオリンピックスタジアムを中心に、半径8キロ圏内にほとんどの施設を集中させる。前回五輪の際に建設した競技場を最大限活用するのも特徴である。
IOCは、五輪の肥大化抑止の方針を打ち出している。東京が目指す五輪は、IOCのこの路線に合致したものといえよう。治安面や充実した都市機能も強みとなるはずだ。
だが、厳しい財政状況の中、競技場整備だけで約3000億円を要するのも事実である。国と都の負担割合など、詰めるべき課題は少なくない。
運営費については、企業からのスポンサー料やテレビの放映権料、チケット収入などで賄う方針だが、今後の景気動向に大きく左右されることは間違いない。
招致賛同の国会決議は、民主党などが難色を示し、ファイル提出までに採択されなかった。ライバルのシカゴは、オバマ大統領が招致に意欲をみせている。
現地調査などの際に、日本としても国を挙げて取り組んでいる姿勢を示す必要があるだろう。
何より大切なのは、国民の盛り上がりである。世論の支持率が低く、競泳の北島康介選手らがPRに努めてきた。
読売新聞の最新の調査では、五輪開催に賛成する人が74%に達した。徐々に期待が高まっているようだ。支持のすそ野をさらに広げ、アジアで初となる2度目の開催にこぎ着けたい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090215-OYT1T00002.htm