小泉元首相から自らの発言を公然と批判され、苦境に立つ麻生首相は、追加景気対策の策定や得意分野と自負する外交などで局面打開を図る構えだ。
しかし、与党内には「首相が失言癖を直さない限りは、政権浮揚はおぼつかない」と冷ややかな空気が漂っている。
首相は14日、都内の品川区立品川小学校を視察した。校長室で「明るく 清く 正しく 強く」と揮毫(きごう)した後、6年生の社会科の授業を見学。児童から「なぜ衆院と参院があるのか」と問われた首相は、戦前の貴族院が参院となった歴史などを丁寧に説明した。衆参で法案の議決が異なった場合、衆院の3分の2の議席で再可決できる仕組みにも触れ、「そういうルールになっている」と強調した。
小泉氏の批判について、首相は「叱咤(しった)激励だと感じた」と殊勝な態度を見せている。しかし、小泉氏が定額給付金の財源確保のための2008年度第2次補正予算関連法案の衆院での再可決に異議を唱えたことには、耳を貸すつもりはないというわけだ。
今後は、来日するクリントン米国務長官との会談やサハリン訪問など外交日程が続く。首相は外交で得点を挙げるとともに、2次補正関連法案、2009年度予算案の成立後、4月中に09年度補正予算案も編成し、「政局よりも政策」で実績を積み上げたい考えだ。
首相は、自民党内の「麻生降ろし」の動きについて、「党内に敵がいた方がやりやすい」と周辺に語り、意に介す風はない。首相が目指しているのは、支持率を回復させ自らの手で衆院解散・総選挙に打って出ることだ。その際は「小泉構造改革路線の転換」を掲げて戦いたい意向だとされる。
自民党ベテラン議員の一人は「首相は郵政民営化や三位一体改革の結果、地方が疲弊したとの思いが強い。構造改革路線を転換しないと、次期衆院選は2007年参院選の二の舞いを踏むと思っている」と解説する。
ただ、首相は強気を装っているだけだと見る向きもある。首相周辺は「首相は、横になれば、いつでもどこでも眠れていたが、最近は夜、よく眠れないようだ。いろいろ悩んでいるのかも知れない」と指摘する。
今回の「郵政発言」をきっかけに、構造改革支持派の議員らは首相への反発を強めており、首相が持論を押し通そうとすれば、遠心力が働くというジレンマも抱えている。「首相自身が変わらなければ支えようがない」との声も強く、「綱渡り」の政権運営が続くのは避けられそうにない。
安倍元首相は13日夜、都内のホテルで麻生首相にこう助言した。
「郵政問題は政策ではなく、即政局になる。言っては駄目ですよ」今後の主な政治日程2月16日 2008年10〜12月GDP発表
17日 麻生首相、クリントン米国務長官と会談
18日 日露首脳会談(サハリン)
下旬 08年度第2次補正予算関連法案が衆院で再可決?
2009年度予算案が衆院通過?
3月下旬 09年度予算が成立?
4月2日 金融サミット(ロンドン)
中下旬 09年度予算関連法案が衆院で再可決?
09年度補正予算案を提出?
6月3日 通常国会会期末
7月8日 主要国首脳会議(10日まで、イタリア)
12日 東京都議選投開票9月10日 衆院議員任期満了
30日 麻生首相の自民党総裁任期切れ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090215-OYT1T00127.htm